前回の記事では、スタートアップがデジタルマーケティングを始めるときに、知識や正しい投資カ所の見極めがポイントになることをご紹介しました。
今回は、そのデジタルマーケティングに関する課題を乗り越える方法について、掘り下げていきます。この記事では、サブスクリプション(定額課金、以下サブスク)系のビジネスモデルを念頭に、CAC(顧客獲得単価)とLTV(顧客のライフタイムバリュー)に着目しながら、成功の秘訣を探っていきます。
目次(クリックしてジャンプ)
デジタルマーケティングで必要なデータの整理
デジタルマーケティングにおいてはまず、データの整理が重要なポイントとなります。具体的には自社のウェブサイトを訪れてくれたユーザーの属性や、どのような経路(きっかけ)で自社のサービスに興味をもたれたのかを知ることです。パン屋を例にとれば、近所の主婦が新聞の折り込みチラシを見て歩いてお店に来てくれた、あるいは雑誌の記事を見たサラリーマンが電車に乗って来店してくれた、といったデータになります。
集めたデータは、サイトに来た顧客の属性や流入経路、顧客がとった行動、滞在時間などに区分け(セグメント化)したり、分類した項目をいくつか組み合わせて分析したりすることにより、データを「見える化」できます。ウェブサイトであれば一般的に使われているのが、Googleの提供する無料のアクセス解析サービス「Google Analytics」(グーグル・アナリティクス)を導入します。
整理されたデータは、施策の判断材料になる
グーグル・アナリティクスを使うと、そのサイトに訪れたユーザーは、どこからどういう経路をたどってサイトを訪れたのかが分かります。検索エンジンからの流入(オーガニックといいます)なのか、Facebook(フェイスブック)やInstagram(インスタグラム)といったSNSの投稿から移ってきたのかというデータです。
顧客の流入経路が把握できたところで、次は流入ごとのLTVを計測することが重要になってきます。LTVは顧客から生涯にわたって得られる収益のことを指します。先ほど例にあげたパン屋でいえば、チラシを見て来てくれた近所の主婦の方が、雑誌を見て電車に乗って訪れたサラリーマンよりもLTVが大きいと推測できます。サラリーマンは一見(いちげん)さん、主婦は常連さんと言えば分かるでしょうか。
リアルの店舗と同じように、その企業にとって、どこから流入したユーザーのLTVが大きいかを把握することによって、どこにマーケティング予算を多く投下すればよいかという判断ができます。デジタルの施策としては、SEOやウェブ広告、戦略的PR、コンテンツマーケティング(オウンドメディア)、SNSのアカウントの運用など、流入経路とLTVを見て判断することになります。
顧客ごとにLTVとCACを見て施策を判断すべし
ここからは、なぜLTVが重要なのかについて深掘りしていきます。前回、CAC(一人当たりの顧客獲得コスト)の話もしましたが、LTVを加味せずに、CACだけで広告予算などのマーケティング投資をすると、実態とミスマッチが起きるおそれがあります。
月額料金が発生するサブスク系のビジネスモデルでは、
LTV = 一人の顧客が支払う料金 × 収益率 × 継続期間(月)
という計算式が成り立ちます。
仮に、収益率を50%とした場合、
LTVは、5000 × 0.5 × 6 = 15,000(円)
となります。
この15,000円は、半年間のPaybackを狙う場合、1人当たりに駆けられる獲得コストの上限額となります。
なぜならば、広告費がLTVの15,000円を1円でも上回ると、赤字になってしまうからです。
では、顧客の継続期間が12カ月の場合はどうでしょうか。
LTVは 5000×0.5×12 = 30,000(円)となり
一人当たりに駆けられる獲得コストの上限は3万円と倍に増えます。
もちろん、広告費を上限までかければ、利益はゼロですから、あくまで理論値となります。
大切なのは、最適な広告費用を判断するためには、ユーザーごとにLTVとCACの両方を見極める必要があるということです。
デジタルマーケを実行するには、人材が不可欠
ここまで、デジタルマーケティングの施策について説明してきました。次に資金調達の途中段階にあるスタートアップが、マーケティングに精通した人材を育てたり、新たに雇ったりする余裕があるのかという問題について考えます。デジタルマーケティングに詳しい人材の報酬は高い傾向にあり、LTVを含め深いデータまで追うことのできる人材はそう多くはいません。
マーケティング人材の不足を補う解決策としては、外部の業者やフリーランスに外部委託(アウトソース)するという選択肢があります。アウトソースした方がいい理由としては、
- データの整理は素人が簡単にできるものではない(経営者にはネットや書籍などでやり方を調べたりしている暇がない)
- グーグル・アナリティクスは無料で使えるだけに、サポートを受けることが難しい。
の2つが大きな理由です。
デジタルマーケティングを外部のプロに任せる場合、グーグル・アナリティクスの認定パートナーである、データの整理に強いといったところがチェックポイントとなります。
スタートアップの多くは、経営者がマーケティング担当を兼ねていることも多く、社内にデータを整理できる人材がいることは希(まれ)です。結論としてはデジタルマーケティングに精通した、外部のプロに任せることがおすすめです。
インタビュー・取材記事掲載はこちら