無料の資料掲載・リード獲得し放題サービスはこちら

登録者40万人&再生回数1億回突破 dipチャンネル運用の成功に学ぶ、Z世代に「刺さる」SNSマーケティング戦略

Dip株式会社・時永氏

 YouTube、TikTok、TwitterなどのSNSツールを活用して自社の情報を発信し、ファンを集めるというSNSマーケティング。SEOメディアと並行して展開する企業も増えつつあるなか、「バイトル」などの人材サービス事業を手がけるディップ株式会社では、YouTubeやTikTokを活用したSNSマーケティングに取り組んでいる。

 

 同社では2022年にソーシャルメディア課を設立しSNSに注力しているが、その背景には「私たちdipは夢とアイデアと情熱で社会を改善する存在となる」という、同社が掲げるフィロソフィーを基盤としたユーザーファーストの意識や、そこから派生した「友達作り」の目的があるという。

 

 ディップ株式会社商品開発本部・マーケティング統括部コミュニケーション戦略部ソーシャルメディア課・時永恭伸氏に、ディップが展開するSNSマーケティング戦略や、主なターゲット層であるZ世代の意識や特徴などについて取材した。

ユーザーからの共感で「求人サイトへの関与度の低さ」を解消

—— 貴社の事業概要と、マーケティング部の担う役割について教えてください。

ディップ株式会社商品開発本部・マーケティング統括部コミュニケーション戦略部ソーシャルメディア課・時永恭伸氏(以下、時永):当社は「Labor force solution company」というビジョンを掲げ、労働市場の問題を解決し、誰もが働くことを喜びと幸せと感じる社会を目指している企業です。事業としては「バイトル」を含む人材サービス事業とDX事業を展開しています。

Dip株式会社・時永氏

ディップ株式会社 商品開発本部・マーケティング統括部 コミュニケーション戦略部 ソーシャルメディア課・時永恭伸(ときなが やすのぶ)氏
2023年4月、ディップ株式会社に新卒入社。学生時代はSNS運用に取り組む。現在はマーケティング統括部ソーシャルメディア課にて、TikTok「バイトル会社員の日常」YouTube「僕らの凸げき日記」の戦略から実行までを担当。

 マーケティング統括部のミッションは、会社全体の売上と利益を高めるため、マーケティングへの投資とその意思決定をすることです。そのために自社が狙うべき市場でのポジションやターゲット層、クライアントのニーズを明らかにし、商品やサービスが売れる環境を形成しています。

 ソーシャルメディア課は現在6人のメンバーで、YouTube、TikTok、Twitterのオウンドメディア・アカウントを運営しています。

—— どのような事業課題を解決するために、YouTubeやTikTokを始められたのでしょうか。SNSマーケティングの経緯や成果について教えてください。 

時永:ず、「求人情報サービスに対してユーザーの関与度が低い」という課題がありました。媒体ごとに掲載されている求人内容に大きな差はないため、サービスの競合併用率は非常に高いです。それゆえ、ユーザーがアルバイトをしたいと思ったときに接触できるかが重要でした。

 関与度の課題に加えて、「求人情報サイトに対する信用度が低い」ことも悩みです。Z世代からは「求人情報サイトの情報はいいことばかり載っていて信用できない」というネガティブな感想も寄せられています。そのため、ユーザーからフェアに共感されるようなイメージを創出することが急務でした。 

 そこで、若年層の利用率が高いTikTokとYouTubeを活用し、毎日ユーザーと接触をすることでディップという企業を身近に感じてもらうファンマーケティングを開始しました。開設から1年強で合計フォロワー40万人(※1)を達成し、1億回再生を突破する人気アカウントに成長しています。

企画・運用・分析の体制を整え、「トレンド×強み」でZ世代に訴求

—— SNS運用はどのように行われているのでしょうか。

時永:まず各工程をマーケティングフレームに落とし込み、内容・検証・運用の3側面でMECEに整理しました。そのうえで市場調査・戦略・戦術・KPI設定・成功基準(サクセスクライテリア)などを詳細に設計することで、SNSをマーケティングそのものとして捉えています。

Dip株式会社・マーケティングフレームへの落とし込み

 例えば視聴者にどういうニーズがあるのかといった市場調査をソーシャルメディア課のメンバー全員で行い、「TikTokでアカウントを伸ばすための10か条」を制定しました。動画企画は課のメンバーそれぞれが担当週を持ち、週ごとに企画するという形をとっています。

 動画投稿後には視聴回数などの結果を振り返り、分析とディスカッションを行い、ネクストアクションを決めるのが一連の流れです。編集のみアウトソースしており、それ以外の部分を自分たちで行う体制です。

 こうした取り組みを続けた結果、それぞれの戦略・戦術に基づいた企画運用と再現を繰り返すことができ、アカウント登録者数や視聴回数などの着実な伸びにつながりました。最初にしっかりとした体制を整え、より細かく改善と再現を繰り返したことが、トレンドが移り変わるSNS市場でも戦えるポイントだったと思います。

—— Z世代に「刺さる」SNSメディアへとグロースさせるためには、何が成功のポイントとなるのでしょうか。

時永:SNSのトレンドと企業の強みを組み合わせ、それを表現することがポイントです。

例えば当社の場合、主軸の人材サービス事業の強みを活かし「働く人」や「お仕事」をフューチャーしました。そこで、TikTokトレンドの「型」と企業の強み「お仕事」を組み合わせたショートドラマシリーズなどを投稿し、安定的に100万視聴を出し続けることができています。

 YouTubeでは、トレンドの「ながら見視聴」と、企業の強み「お仕事」を組み合わせた職人技や看板娘シリーズを投稿し、総再生回数は650万回を超えています。各動画プラットフォームのトレンドと企業のメッセージを組み合わせることで、視聴者に受け入れられる企業チャンネルを構築できました。

「3秒ロック」で離脱率を大幅改善

—— 効果検証はどのようにされていますか?

時永:分析ダッシュボードを作成し、毎週水曜に効果検証とディスカッションを行っています。フォロワー5万人を超えるまでは、特に3秒時点の視聴維持率を注視し、効果検証を実施しましたね。これを「3秒ロック」と呼び、違和感やぎょっとする要素を冒頭に取り入れることで視聴維持率を向上させ、視聴回数を90万回まで伸ばしました。

 動画投稿を始めたばかりの頃は視聴回数が1~2千回ほどでしたが、3秒ロックを注視し始めると徐々に伸び、現在では3日に1回のペースで100万再生を出せるようになっています。

—— 3秒ロックのような「伸びるポイント」を見定めるためには、何が重要なのでしょうか?

時永:日々さまざまな動画を出して効果検証を行うことはもちろんですが、市場調査も大きなポイントだと思います。

 リサーチ用のアカウントを作るというのも1つの手です。例えばショート動画であれば、その人の好みに基づいてトレンド動画がレコメンドされてくるので、我々の視聴者層である10代の中高生の気持ちになってTikTokを使ってみると、自然とそういうレコメンドが表示されます。流れてきたものを研究して、それを動画に活かすというのも効果的だと思いますね。

Z世代と「共創」するWith型コンテンツ

—— 運用においては、どのような工夫をされましたか?

時永:エンゲージメントを増やすため、動画のコメント欄をフォロワー同士で盛り上げる「掲示板」化を目指しています。Z世代はオンラインでのコミュニケーションが得意であり、自分のコメントに「いいね」をもらいたいなど、認知欲求が高いという特徴があります。これらのインサイトを活かし、コメント欄が盛り上がりやすいような設計を行いました。

 実際に動画についたコメントにリプライする際は、自分の意見も織り交ぜながら、友達とチャットするような感覚で内容を考えていますね。また、コメントには投稿者・演者の鈴木が日々時間をとって視聴者に直接返信しています。実際にコメント欄が盛り上がった動画はフォロワーの転換率が高く、フォロワー数の増加にも寄与しているようです。

 また、コメント欄に書かれたユーザーの意見や反応から、新たな気づきやアイデアが生まれることがあります。ファンの要望や期待に応えるという双方向のコミュニケーションは、SNSマーケティングを成功させる大きなポイントです。当社としては、動画投稿やコメントへの返信を通じて「ユーザーと友達になる」ことで多くの接点を持ち、最も身近な求人サイトであるバイトルを利用してもらうことを目指しています。

ディップ社のSNSマーケティング・「掲示板化」

—— Z世代にアプローチするために、どのような点に気をつけられているのでしょうか。

時永:「一緒に作り上げていく」with型のマーケティングを必ず行うように気を付けています。Z世代は、情報のあふれる世界でさまざまな価値観を受け入れながら生きているため、モラル・社会性が非常に高いのが特徴です。またオンラインでのコミュニケーションを苦とせず、むしろそれがモチベーションになっています。広告色の強いpush型コンテンツは共感を得にくいので、一緒にファンコミュニティを作っていく“with”の姿勢がZ世代に刺さるアプローチだと言えます。 

客観的な視点を取り入れながら、テーマごとに最適な動画設計を実現

—— メディア運営において最初から結果を出すことは難しいと思いますが、「結果の出ない時期」をどのように乗り越えたのでしょうか。

時永:客観的に内容とデータを見て、何が良いのか、悪いのかを全員が共通認識できるようにしました。

 まず客観性担保のため書籍、プラットフォームや代理店へのヒアリング、セミナー出席を行いました。そこで第三者視点や市場のノウハウをラーニングとして蓄積しながら、アカウントの内容や方向性を見直し、ネクストアクションを実行。投稿後は分析をおこない、繰り返し改善を行いました。

—— 培った知見やテクニックを、実際のコンテンツにどのように落とし込んでいますか?

時永:コメントの掲示板化を狙い「エモ消費」と「だれでもコメントできる仕掛け」をコンテンツに落とし込みました。

 具体的には、動画テーマを給食とすることで、懐かしい気持ちになったユーザーから数多くのコメントを貰う、動画の最後に「好きな給食は?」など4択の質問を設けてだれでもコメントできるようにする、などの要素を取り入れました。

 結果、コメントの掲示板化に成功し、視聴回数200万回、フォロワー1万人を獲得できました。

日々の改善を繰り返しながら、クライアント企業にもサービスを展開

—— 貴社の今後の展望について教えてください。

時永:今後も、当社はSNSを通じてユーザーからフェアに共感されるようなイメージを創出するべく、当社とユーザー・ユーザーと顧客企業との接点拡大に注力し、YouTubeとTikTok運用を拡大・継続していきます。目指すは「フォロワー数100万人」と「企業YouTube登録者ランキング1位」です。

 また当社の顧客企業も、「SNS運用の重要性は感じていてもリソースが割けない」「リーチが伸びない」という課題を抱えている企業が多く、10月から企業ブランディングと職場環境の理解を推進する個社動画支援サービスの提供を開始しました。すでに投稿した企業からは好評をいただいており、投稿2週間で4.5万回の視聴回数も獲得できています。1年で50社、3年で150社へのサービス提供を目指します。

—— 最後に、 これからZ世代へのSNSマーケティングに挑む企業へのアドバイスをお願いします。

時永:pushではなくwithの姿勢で共感を生み、企業のマーケティングとして重要なポジションを確立していくという意識を持って取り組むことが重要だと思います。

 普段からYouTubeやTikTokを視聴している人でも、いざ企業としてコンテンツを発信する場合、最初は何から手を付ければよいか分からないですよね。当社も最初からうまくいっていたわけではなく、マーケティングフレームに則り、リサーチや企画・動画の改善を日々繰り返し続けることで、少しずつ成長できました。

 これからYouTubeやTikTokに取り組む方とは、同じ「企業の中の人」として、ソーシャルメディア界隈を一緒に盛り上げていけたらと思っています。

【編集後記】

 野村総研によると、Z世代は「1990年代半ばから2010年代序盤に生まれた世代で、2023年現在12歳~28歳前後の年齢層に当たる」と定義される(※2)。今回取材した時永氏は2023年度入社の新卒社員であり、まさにZ世代の一員だ。時永氏はディップの社風について、「新卒の社員であっても活躍できる土壌がある」と語る。

 

 新人であってもSNSマーケターとして力を発揮できる環境があるDipだが、今後はさらなる組織強化を図るべく、採用も強化していくという。若い力を伸ばす土壌に根を張る人材が、さらなる発展に向けて芽を伸ばしていきそうだ。

※1::dipSNSアカウント(YouTube,TikTok,X,Instagram)の累計フォロワー数(2023年11月26日・ディップ調べ)
※2:NRI・用語解説

取材・構成:MARKETIMES編集部・中島佑馬