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Web上の CX (顧客体験) 改善に役立つフィードバックを取得するヒント

デジタル上での顧客との接点が増える中、デジタル プラットフォーム上でも他のチャネルと同様、顧客の声を収集し、顧客体験(CX)を改善する取り組みに着手する企業は増える一方です。しかし同時に、多くの企業からは「Web上でフィードバックがあまり集まらない」「集まっても改善に結びつくような分析ができない」という声も聞かれます。

その理由について深堀すると、ある一つの傾向が見えてきます。それは、NPS (ネット・プロモーター・スコア) ・顧客満足度や顧客推奨度などを、ただ目的なしに取得しているだけ、というフィードバック取得プロジェクトの多さです。測定の目的・活用予定がないのにNPSを計測すると、ウェブ担当の人が自分ごととして腹落ちすることができず、結局はweb閲覧者のデジタル上での体験に悪影響を及ぼす可能性があるので、本当に必要であるかは再考の余地があるかもしれません。

それでは、どのように声を収集すれば、顧客体験の改善につながる声の取得ができるのでしょうか。単純なようですが、ここで重要なのは「なぜ」の部分を精査することです。

貴社での目的は、「アプリのDL数や利用率、自社サイトの訪問者数を増加させたい」といった、デジタル接点の増加にあるのでしょうか?それとも、「Web内の情報を使って自己解決率を上昇させたい」「アプリ経由での問い合わせの一次受付を増やしたい」などの、デジタル上での顧客体験の向上でしょうか。企業によっては、もっとビジネスのKPIと連動した「コンバージョン率を向上させたい」「リピーターを増やしたい」、または、CXの考えに則り「自社のアプリがお客さまの生活に不可欠な存在になってほしい」といった目的を設定する場合もあるかもしれません。どのような目的であっても、内容をしっかり把握し、その目的の達成に繋がる内容を収集することが重要です。

また、目的を設定する際は、可能な限り具体的な内容を設定することが重要です。例えば、「自社ECサイトのWeb UXを改善したい」という目的を考えてみましょう。ここでいう「改善」とは、いったい何を意味するのでしょうか?色やレイアウトの変更?「購入」「問い合わせ」ボタンの位置変更?それとも提供するコンテンツそのものの変更でしょうか?「改善」という漠然とした内容ではなく、例えば「購入までの手順を理解しやすくする」等の具体的に何をどうしたいかと設定することが重要です。

ジャーニー分析

例えば上記の例のように、Web サイト上の行動履歴を分析するようなツールを使っている方は多いと思います。このようなツールを利用することで、サイト訪問者がどのページ間を移動しているか、どこで離脱しているかといった、定量的なデータを取得することができます。こういったデータを分析することで、問題がどこにあるのか、もう少し詳細に仮説を立てることができます。クアルトリクスでは、こういった定量的なデータをOデータ(オペレーション・データ、業務データ)と呼んでいます。

上記の例では、トップページから閲覧を開始したサイト訪問者が、ウェビナーを視聴するまでの行動履歴を表しています。一番最後の部分で、ウェビナーを視聴することができない訪問者が一定数存在することが理解できます。つまり、このサイトでは、「ウェビナーの視聴率が悪い→登録プロセスの改善が必要。そこがwebのUXの品質を落としている」と仮説を立てることが可能になります。

課題の存在と内容はこれで把握できました。それでは、ここからどのようにフィードバックを得ればいいでしょうか。まず KPI としては、NPS®が適切と思われます。NPSは定点観測に適している指標であるため、NPSの変化がアラートとなって改善した方が良いタイミングだということがわかるのです。アクションを起こすにはどういうアクションが必要かを考えるところが必要なので次のステップへの布石になります。ただ、最初にお伝えしたように、NPSをただ漠然と計測していては、NPSが低い理由とその背景、またそのような数字が出るに至った悪い「顧客体験」の内容は何であったのかは特定できません。

クアルトリクスでは、このような体験の内容に関するデータをXデータと呼んでいます。顧客体験の改善にはこの定性的なデータを取得して、背景・原因、そして訪問者の感情を理解することが重要です。

CXのKPIとドライバー

とはいえ、「感情に関するデータ?具体的に何を聞けば把握できるのか?」と混乱される方もいらっしゃることでしょう。クアルトリクスでお勧めしているのは、体験に影響を与える3つのドライバー (要因) である「成功」「努力」「感情」の3つについてのデータを収集することです。

例えば、「ウェビナー登録率を向上させるための、登録プロセスの改善」の場合では、「希望のウェビナーに登録できたのか」をYes/Noで聞く、「ウェビナーを全部視聴できたか」質問し、「一部しか聞いていない」「完了できなかった」利用者が存在する事実を把握することで、後にこの人が抱いている感情の文脈を理解するのに役立ちます。

加えて、「登録できたが、何度か修正しなくてはいけなかった」(登録方法が分からずにサポートに問い合わせた、検索する必要があった等) といった、プロセスに問題があった場合には、「努力」値に影響が生じるため、ここで質問してもいいかも知れません。

「努力」の計測法としては、CES(顧客努力指標)と呼ばれる指標が代表的です。「完了するまでに負担はどのくらいだったのか」を、直観的に5段階で回答してもらいます。もし、登録の前段階である「ウェビナー検索」の部分に問題があるのではという仮説がある場合は、「ウェビナーは検索しやすかったのか」等、質問を変えてもいいでしょう。

「感情」の部分は、少しひねりを加えて、今後について尋ねます。例えば購入・継続意志や再訪問意思があるかなどです。「感情」の部分が一番反映されやすいのは未来への行動であるため、ここでは「今」どのような感情を抱いているかではなく、今後の意志を聞くことで、訪問者の感情を汲み取っていきます。

そして、最後に重要なのは、回答者からのフリーコメントです。ここまでの質問は回答者の負担軽減のため選択式を利用しますが、ここまで記入してくれた人の中には、「もっと違うことを言いたい」といった感情を持っているケースがしばしば見受けられます。

その感情を汲み取るのに適切なのが、「改善点を1つ挙げるとしたら何でしょうか」という質問を利用した自由記述欄です。「その他ご意見等ありましたらお答えください」との自由記述欄が多いようですが、弊社調査によると「改善点を1つ」という言葉遣いにすることで、回答率が明らかに上昇します。ちょっとした違いですが、次の改善アクションにも繋げやすいポイントでもあり、実施も難しくないため、ぜひお試しください。

それでは最後に、実際にサーベイを設計する際のポイントをいくつかご紹介します。

サーベイを設計する際のポイント1不愉快にならない程度の簡潔さ、読みやすさを追求する

不愉快にならない程度の簡潔さ、読みやすさを追求する:もともと Web ページの訪問者は、フィードバックを寄せることが目的ではなく、情報収集、カスタマーサポートへの連絡など、別の目的を達成するために訪問しているケースが大半です。そのため、短い時間で質問内容を理解してもらえるようにし、回答者の負担を減らすことが重要です。

サーベイを設計する際のポイント2設問数は必要最小限にする

設問数は必要最小限にする:冗長なアンケートに答えるのが好きな人はまずいないでしょう。通常のサーベイの質問数は 20 問ほどが一般的ですが、デジタル上ではさらに短く、質問数は5問までが、回答時間は2分以下がベストです。もし、ネガティブな反応をした人に対し、より深い質問をしたいという場合は、「さらにご意見をお聞きしたいので、お答えいただけますか?」などの断りを入れるという工夫も有効です。

サーベイを設計する際のポイント3適切な設問形式と条件分岐を使う

適切な設問形式と条件分岐を使う:例えば不満を持った人からフィードバックを取得したい場合は、「満足していない」と答えた人だけがフィードバックを寄せられるような分岐設定をすることが必要です。また、「不満がある」と感じている回答者には、必ず不満を持つ理由があるはずです。選択式の設問よりも自由解答欄を設定し、建設的にフィードバックを寄せてもらって、その内容を改善に繋げることが推奨されます。

また、デジタル フィードバックの回答率は平均して非常に低く、約0〜2.5%と考えられています。期待値を調整しつつ、テクノロジーの力を借りながら、少しでも回答率を上昇させられるよう、フィードバック サーベイをどのように表示させるかの方法を調整することも重要です。

例えば自社ブログなどで、自社製品やサービスを紹介するコンテンツを展開している企業も多いのではないでしょうか。内容が読者の期待通りだったのかは、比較的手間のかかるコンテンツであるだけに、気になるところでしょう。

下記のように、コンテンツを読み終わったタイミングで、「この記事はいかがでしたか?」という簡単な設問を設定することにより、訪問者に手数をかけずにフィードバックを収集することができるようになります。悪い評価をつけた回答者には、どこが悪かったのか改善点を自由記入欄に書いてもらうことが重要であるのは、前述のとおりです。

ECサイト

皆さんが自社以外の企業のサイトを訪問し、不便を感じたときのことを思い返してみてください。「確認ボタンが押せなくなっている」「情報が多くて表示速度が遅い」「検索性が悪い」「フォームの文言が曖昧すぎ、何を書いていいのかわからない」等、Webサイトの UX の不具合にイラっとした経験はないでしょうか。もしかしたら、見慣れてしまった担当者が気づいていないだけで、貴社のサイトでも同じことが起きている可能性はないでしょうか?その「イラっ」とした時にフィードバックを取得することで、どこが悪かったのかのポイントを取得することができます。また声を元に改善を繰り返していることが伝われば、回答の質も上昇していきます。多くの場合、伝えても変わらないよねと思っていることが原因で建設的なフィードバックを得られていないようです。

また、操作性の悪さ等は、言葉だけではなかなか伝えにくいものです。該当するページ上で画面のスクリーンショット・ファイルなどを送信できる仕組みを設置することで、Web訪問者のフィードバックを明確に理解し、すぐに改善につなげることで、UXは向上していきます。

フィードバック例

こういったテクノロジーを利用してフィードバックを収集・分析することで、IT部⾨に大きな負担をかけることなく、⾼速で PDCA を回し、新たな気づきや課題の発⾒と発掘を瞬時にデジタル上で実現できます。

また、デジタル上の顧客体験が悪く、さらにその問題がデジタル上で解決できない場合、コールセンター等に問い合わせが行くことは珍しくありません。顧客の手間や不満はもとより、コールセンター部門では 本来はデジタル経由で自己解決できる案件の受電をしていることで受電数が増え、お客さまの待ち時間が増える現象もでてきます。結果、「ロイヤルティの低下」「機会喪失」、場合によっては「SNS 上での炎上」等、誰にとっても嬉しくない結果が生まれることにもなりかねません。別ブランドへの乗り換えが今までになく簡単になっている現在、継続して良いデジタル体験を提供することが求められているといえます。

繰り返しになりますが、顧客体験の向上には「提供側の当て推量による改善」に頼るのではなく、「顧客はどこに不満があるのか、どうすれば喜んでもらえるのか」というフィードバックを顧客から収集し、その内容に基づいて真摯に行動する必要があります。クアルトリクスの調査によると60%以上の顧客は声を聞いてほしい、声を基に改善してほしいと希望しています。最終的には「ファン」の獲得、ロイヤルティの強化につながり、強い競争力に結びついていくはずです。

注:ネット・プロモーター®、NPS®、NPS Prism®そしてNPS関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。

<執筆者プロフィール>
久崎 智子 CX ソリューション ストラテジー シニア ディレクター

お客様の声を起点とした業務改善・プロセス改善・システム開発プロジェクトのリード及びコーチングを金融サービス・製造業・ヘルスケア・エネルギー事業等多岐に渡り提供、20年以上の経験を有す。クアルトリクスでは経営戦略にエクスペリエンスマネジメント(XM)を導入するアドバイザリー支援を担当。