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事業の成否を分ける!アプリマーケティングにおける広告予算配分のキホン

事業の成否を分ける!アプリマーケティングにおける広告予算配分のキホン

アプリのマーケティングにおいて、広告運用を通じたユーザー獲得は事業の成長を左右する重要な役割を担っています。適切に運用することで事業を持続的に成長させることもできる一方で、運用が上手くいかなければ事業の縮小・撤退にもつながります。

にもかかわらず、まだ市場的には事業を成長させるための広告運用のノウハウが十分に浸透しているとは言えない状況だと考えています。伸びる見込みのない広告に貴重なクリエイティブリソースを割いたり、伸びる余地のあるメディアに十分に投資ができていない、といったケースです。

本稿では、私がモバイルゲームのマーケティングを通じて経験した広告運用ノウハウのうち、特に事業に与える影響の大きい「広告メディア別の予算・リソース配分についての考え方の基本」をご紹介します。

そもそも広告運用担当者の仕事とは?

アプリマーケティングにおける、広告運用の担当者の仕事とはいったい何でしょうか?
与えられた予算を、目標のCPA(獲得単価)にあわせて消化することでしょうか?それともROAS(広告の投資対効果)を少しでも高めることでしょうか?

これはどちらも“NO”だと考えています。

アプリが広告を運用してユーザー獲得をするのは、事業の売上を伸ばすことであり、ひいては利益を最大化することにあります。
CPAが目標通りで予算消化できたとしても、ROASが悪ければ“無駄な投資=損失”になってしまうし、ROASが目標に達していたとしても、獲得のボリュームが不足していたら事業は伸びません。

例えば月に1千万円を消化し、回収期間中のROASが100%であったとしても、アプリ運用のためのコストが2千万円かかっているとしたら事業は赤字を脱却できないわけです。この場合は、少なくとも月に2千万円以上を消化しつつROASを維持する必要があります。

つまり広告運用の担当者は、「事業が持続可能なボリューム以上でユーザー獲得しつつ、PL上許容可能なROASで運用する」ということが求められるということです。

広告運用担当者が陥りがちな“ミス”

前述のように、広告運用の担当者には事業を伸ばすための運用が求められます。しかしながら私の経験上、この「事業を伸ばす」という目的を見失ってしまうケースが非常に多いように感じられています。

ケース①:「ROASキープ症候群」

事業を伸ばす目的を見失ってしまうケースの一つがこの「ROASキープ症候群」です。
例えば上司から「ROASだけはちゃんと守るように!でないと赤字になるから!」というような指示が出ていたりして、ROASが悪化する可能性のある施策に踏み切れなくなるという状況です。

経営的には妥当な判断だとしても、担当者の立場からするとROAS目標を守ることが至上命題になってしまうため、非常に視野が狭くなります。こういうケースでは、ROASが良いメディアを無条件に評価してしまい、逆にROASが悪ければ無条件に配信停止するといった対応になりがちです。

この症例はどうも世の中に非常に多いようで、アドフラウド(広告詐欺)の温床にもなっています。「ROASさえ良ければ良い」という本末転倒な考え方につけこみ、オーガニック(検索など自然流入)のユーザーの成果を奪うような広告に大量に配信してしまったりします。
オーガニックのユーザーは良質なユーザーであることが多いので、こういったアドフラウドの広告はROASが良くなります。

またアドフラウド被害に合わなくとも、検証のための配信チャレンジをするとROAS悪化のリスクが出てしまうため、新しい手法のトライアルなどもできなくなっていきます。こういった悪循環で広告配信が縮小し、そのため事業自体も徐々に縮小していくというケースはかなり多いようです。この症候群には最大限の注意が必要です。

ケース②:「メディア増やしすぎ症候群」

代表的なケースのもう一つがこちらです。とにかく目標を達成したいがために、配信するメディアを増やしすぎるというケースです。

デジタル広告はオフラインのメディアと違って、入稿や効果検証にかかる工数がかなり少ないです。人によってはあたかも「出稿の業務にかかる工数はゼロ」かのように誤解しているのではないかと思うこともあります。

しかしながら、誰もがご存知のように広告運用の基本は「PDCA」です。特にPlanとCheckの部分に注力して改善を続けることが、事業を伸ばすための根幹になります。よって、ひとつのメディアを配信しようとするさいには、そのメディアがどういった特性をもっており、どんな配信先に、どんなユーザーに、どんな形式で配信されるのかを詳細に把握したうえで最適なクリエイティブをPlanし、それをもとにCheckしなければなりません。

ということは、メディアを新たに配信開始するには、それだけの調査や配信設計、クリエイティブについての入念な準備が必要であり、それがなければ意味のない取り組みになってしまいます。にもかかわらず、この症候群にかかっていると、「配信ボリュームが少しでも増やせるならいい!」といった考え方からなのか、ろくにPlanもせず、他のメディアと同じクリエイティブをとりあえず配信して試してみる…といったような取り組みをしたりしてしまいます。

これでは仮に配信の結果が良かったとしてもCheckのしようがなく、再現性をつくれないため、近いうちにまた困ることになります。そもそも、ある程度のボリュームが見込めて効果が良いメディアであれば、平常時から配信を続けているはずです。目標達成が難しくなってきたからといって、安易に新しいメディアに飛びつくのはオススメできません。

事業を伸ばすための広告予算配分の考え方とは

ここまでの話を踏まえて、事業を伸ばすための広告予算配分の考え方はどうあるべきかについて、具体的に書いていきます。なお、正しい考え方というのは事業の状況や目指すゴールによっても変わるため、あくまで一つの例ということにご留意ください。

サンプルケース

■前提条件
・月間広告消化目標:5,000万円
・目標CPA:500円
・目標ROAS:50%
・事業の状況:回収できる範囲であれば、予算を増額してでもどんどん伸ばしたい

■現在の配信状況(メディア別)

事業を伸ばすための広告予算配分の考え方

さて、あくまで仮ですがメディア別の配信状況のサンプルを用意しました。
※「Google AC」というのはGoogleのアプリキャンペーン広告のこと。以下AC

予算消化額は目標に達しておらず、CPAもROASも目標より若干良くないという、中々に難しい状況です。こちらの表をみたとき、あなたが広告運用担当者であればどうするでしょうか?

ROASをとにかく達成しなければいけないと考える担当者であれば、まずはROASが未達状態であるTwitterやFacebook、記事アフィリエイトAのCPAを下げてROASが50%に達するように調整しようと考えるのではないでしょうか。

しかしながら前提条件にあるように、今の事業の状況は「可能な限り伸ばしたい」というフェーズです。仮に新規事業の立ち上げ期だったとすると、ここで思うようにユーザー獲得が伸びなければ事業自体が成り立たないという可能性もあります。

また、広告運用においては「ポートフォリオのバランス」が非常に重要です。このケースの場合、ACが全体のボリュームの4割という大きなシェアをとっているにもかかわらず、CPAが700円とかなり高い状況です。

となると、CPAが安いメディアを停止した場合、全体のCPAもさらに目標から乖離していくことになるため、少しでもユーザーによる課金売上が悪化したときの投資未回収リスクが高まります(実際に、緊急メンテナンス等で売上が予定より下がるということもあります)。
事業がかなり安定している状況でなければ、安易にCPAを高くするのはあまり良いことではありません。

かといって安易に新たに配信するメディアを増やすというのも、前述の理由で推奨できません。もちろん効果的なメディアもあるでしょうが、十分な事前準備のもと配信しなければすぐにまた同じような苦境に陥ることでしょう。

では、いったいどうすれば良いのでしょうか?

基本は「インパクトが大きいところに注力する」こと

このケースにおける一つの対処法は、「ACのCPA改善をするためにクリエイティブリソースを集中する」ということです。全体の4割を占めるACのCPAが改善しボリューム拡大できた場合、全体に与えるインパクトはどのメディアよりも大きいです。

また、ACはYouTubeをはじめとした非常に多くの在庫を持っているため、伸びたときのボリュームが非常に出やすいです。私の経験では、月に3億円強の広告費を消化したうち、1.5億円以上をACのみで消化したこともあります。

次点でTwitterに注力して改善することが推奨されます。ACに次ぐボリュームが配信できており、ROASさえ改善すれば主力メディアが増えて事業的にも安定するためです。

逆に、記事アフィリエイトBのように「配信ボリュームは少なめながら、ROASは良好なメディア」にリソースを割きすぎることがないように注意しましょう。もちろんできるだけ伸ばせたほうが良いのですが、全体の10%に満たないメディアの配信量が仮に倍になったとしても、目標とするボリュームには届かず、超過達成などは夢のまた夢です。
※あくまでこのケースの場合です

ここで重要なのは、「リソースの集中」という概念です。そもそも広告メディアごとに入稿できるクリエイティブのサイズも仕様も、ユーザーに好まれる見せ方もすべて異なります。にもかかわらず、どのメディアにもサイズを変えただけの同じクリエイティブを入稿しているというケースは非常によく見かけます。ユーザーとしてメディアを使ってみるとわかりますが、メディアに最適化されていない広告を見ると、いちユーザーとしては非常に違和感を覚えるものです。

今回のケースでいえば、ACに注力し、ACに適したクリエイティブを作ってとにかく伸ばすことがポイントであるのに、漫然と他のメディアと同じクリエイティブを入稿しているようではチャンスがありません。ACにクリエイティブリソースを投入し、ボリュームを2倍にも3倍にも伸ばすことができたなら、事業を大きく伸ばすチャンスになります。

事業においては「選択と集中」が鉄則ですが、この鉄則はデジタル広告の運用においても例外ではないということです。

マーケターの仕事は、事業を伸ばすこと

今回はデジタル広告の予算配分の考え方をご紹介しましたが、根底となる考え方は「マーケティング担当者は、事業を伸ばすことが仕事である」ということです。

広告が思うように伸ばせないからといって、配信を縮小していっても事業は伸びません。何としてでも事業を伸ばすべく、必死に状況分析し、勝てる戦略を作ることが重要です。

サイバーエージェントの100%子会社である株式会社アプリボットのマーケティングチームでは、事業を伸ばすための本質的なマーケティングを日々追求しています。

成長市場であるモバイルゲーム市場において、マーケティング力を身に着けて成果を出したいという仲間を随時募集中ですので、興味がある方はぜひご連絡ください。

株式会社アプリボット