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「経験」しないAIは検索エンジンに淘汰される? デジタリフトに学ぶ、AIで作るSEO記事の落とし穴

 2022年11月に一般公開されたChatGPTをはじめ、BING AI(Microsoft)やBard(Google)など大規模言語モデルを搭載したAIチャットボットの発展が著しい。データ学習のために収集される個人情報などをめぐりさまざまな議論が交わされる中、AIを活用した記事制作やソフトウェア開発などの「使い方」にも注目が集まっている。株式会社デジタリフトSEOコンサルタント・城所氏に、人間がSEO記事を作成することのメリットや、AIを活用したSEO記事の今後について取材した。

人間による「深さ」を出すことがSEOの鍵

—— 2023年に入り、ChatGPTをはじめとするAIが大きく進化しました。AIの台頭で、ユーザーの行動はどのように変わるのでしょうか。

株式会社デジタリフトSEOコンサルタント・城所秀征氏(以下、城所):ユーザーが検索するキーワードと検索しないキーワードが、大きく分かれてくると考えられます。たとえば人名や会社名などの事実ベースのキーワードはAIでも人間でも答えに差が出にくいため、このような検索キーワードはほぼAIに取って代わられるでしょう。

デジタリフト城所氏

株式会社デジタリフト・SEOコンサルタント 城所秀征(きどころ しゅうせい)氏
飲食ビジネスの経営に携わり、マネジメント職を経てキャリアをピボット。 SEOを中心としたWebマーケティング会社にてコンサルティングをスタート。 オウンドメディア支援サービスのコンサルタントとして複数のメディアをグロース。 その経験を活かし、デジタリフトへジョイン。 圧倒的なユーザー視点を特徴としたSEOコンサルタントとしてクライアントの事業グロースを行っている。

一方で専門性の高い領域は、その分野に精通した人間による回答のほうが優れていると考えられます。今回のテーマであるSEO記事はAIではカバーしきれない知識や経験が必要な分野なので、記事の内容やサイトの運営方針などの高度な質問をAIに聞いても、人間の回答と比べてユーザーの満足度が低くなる可能性がありますね。

特にBtoBやYMYL(お金や健康)の領域はきわめて専門的な知識が必要になるため、AIの生成する回答よりも深く踏み込んだ人間の回答を求める傾向があると考えられます。そのためSEOの記事においても、専門性の高い内容を書くことが重要です。

ユーザー行動に合わせて検索エンジンに評価されやすい記事を書くことで、より多くの人に読んでもらえますし、そうした記事が生き残っていくというのが私の考えです。

—— ユーザー行動の視点から見ても、専門性の高い領域はAIに取って代わられにくいのですね。しかし、AI技術が進化して専門的な回答に答えられるようになれば、こうした傾向は変わるのではないでしょうか。

城所:可能性はあると思いますが、人間の心理として「AIを信頼できるかどうか」という点には、まだまだ高いハードルがあるように思います。たとえばケースバイケースで対応しなければならない状況において、我々は自らの経験から取捨選択を行って1つの回答を導き出すことも多いですよね。

AIは「経験」をしないので、膨大な量の情報からパターンを学習できても、人間のように経験に基づいた回答ができません。そのため、経験ベースの回答を求める際に、AIによる回答が本当に適切なものとは限りません。

経験に基づいたケースバイケースの判断はさまざまな専門的領域で必要とされますが、たとえば同じ法律でも状況によって適用されたりされなかったりといった判断がなされます。この時に新米弁護士とキャリア20年超のベテランのどちらに話を聞きたいかというと、やはり後者を選ぶ方が多いですよね。AIと人間の違いも、こうした「経験から来る信頼」にあるのではないかと考えています。

AIは膨大なデータを使用した推論はできても、世の中に出ていない考えや、経験則に基づく情報を出力することはできません。そのため、将来的にAIが専門的な質問に答える能力が向上しても、人間の経験や判断力に頼る部分は残ると思います。

検索エンジンは人間の「経験」を求める

—— 専門領域のSEO記事の作成にAIを使うライターも現状では多いと思いますが、これはあまりよくないのですね。

城所:AIの書いたテキストは結局AIによる回答と変わらないので、ユーザーの検索インサイトを満たす「深みのある記事」を作るのは難しいと思います。SEO記事の構成や執筆は、ライターや編集者自身の経験や知見をもとに、人間の手で行なうことが非常に重要です。

とはいえAIを全否定しているわけではなく、記事やスケジュールの管理など、記事コンテンツ周りの作業的な部分はChatGPTなどを活用すると便利です。ただし、情報の正確性やAIをどう使っていくかという部分は、実際に運用する人間の目で本当にその情報が正しいのかを確認しなければいけません。

—— 記事中のテキストをAIが書いたかどうかを判定するツールも出てきていますが、AIが書いたかどうかをGoogleなどの検索エンジン側で判断して除外することもできるのでしょうか?

城所:現状では断言しきれないところもあるのですが、少なくともAIが書いた文章から得られる情報はユーザーがAIに直接尋ねて得られるものと変わりません。そのため、わざわざAIの書いた記事を検索プラットフォームとして上位表示することはないと思います。

Googleの場合は、コンテンツの質を向上させるための基準として存在していたE-A-T(専門性・権威性・信頼性)に、もう1つのE(経験)を加えたE-E-A-Tへのアップデートを行ないました。

これにより、書き手が実際に体験したことを基に書かれたコンテンツをより評価する傾向が生まれています。「経験」と「正確な情報」の2軸から良質なコンテンツを生み出してほしい、というのがGoogleからの要請だといえますね。

検索エンジンから評価される良質な記事を作るのに不可欠なユーザーの検索意図や、解決したい悩みといったインサイトはまさにケースバイケースなので、AIで深堀りできない部分です。ここが人間自身の手でSEO記事の構成・執筆を行うメリットだと思っていて、人間が生み出せる価値を活かした「深い」記事が出ると、相対的にAIの作成した記事の価値が下がっていきます。

今後のSEOでより重要になる要素

そのため「AIが作成した記事だから検索順位を下げる」のではなく、シンプルに「質の低いコンテンツだから順位を下げる」というロジックによって、人間が書いたユーザーニーズの高い記事を上位表示するようになるというのが私の見解です。

「狭く深く」でE-E-A-Tを満たす

—— 個人・法人問わず、SEO戦略は大きく変わってきそうです。

城所:これまではドメインパワーの強いサイトに掲載されている、網羅性を高めた記事が検索上位に表示されやすい環境でした。しかしChatGPTなどの台頭により、網羅性は高いものの内容が薄いという記事でも、ドメインが強力であれば簡単に上位表示されてしまうというリスクが出てきました。

こうしたリスクを受けた近年のアップデートにより、ドメインの強さよりもコンテンツの質を重視するようになったので、E-E-A-Tを満たす良質なコンテンツを生み出すことのほうが重要になります。記事の質を高めるためにニーズを深堀りしていくとペルソナも自然と絞れてくるので、「広く浅く」よりも「狭く深く」を意識することが大切です。

そのため深い悩みを解決する、専門性の高い記事の制作を外部に依頼する際も「丸投げ」は避けるべきです。独自性・専門性は外部の人間ではどうしても限界があるので、「ここは絶対に独自性を出さなくてはならない」というポイントは社内の専門家に巻き取ってもらうことも大事ですね。

—— 「狭く深く」を実現するためには、よりニーズの解像度が高いミドルワードやロングテールワードを積極的に狙っていくべきなのでしょうか。

城所:専門性の高さなどにも左右されるため一概には言えないのですが、少なくともユーザーニーズが広く浅いビッグキーワードは、今後検索されにくくなる可能性はあると思っています。

たとえば言葉の意味や概念を知りたいだけの「〇〇とは」といったキーワードならばAIでも回答できます。そのため、ドメインパワーを活かしてビッグキーワードだけを狙っていくという戦略のメディアは、CVRやクリック数が下がるかもしれません。

今後はミドルやロングテールで攻める方針に変えるメディアも出てくると思いますが、個人的にはそれがメディア本来の在り方だと感じますね。

AIの作る専門性には「実態」がない

—— 専門領域になればなるほど、AIを使ったSEO記事作成はリスクが高いのですね。

城所:AIを使わず「人間の手で記事を作る」というやり方は、SEOで検索上位を取るという戦略においてはもちろんなのですが、オウンドメディアを運営している企業にとってもリードを獲得しやすいというメリットがあります。ECサイトでの購買にもつながりやすいですね。

キーワード選定の話にも関わるのですが、たとえば当社のメディアで「SEOとは」というビッグキーワードを狙って記事を作ったとしても、いきなりSEOについて問い合わせる企業はなかなかありません。

デジタリフト城所氏2

SEOは一朝一夕で完璧に対策できるものではない専門領域なので、顧客の抱える悩みも深いものがあります。しかしビッグキーワードは悩みが抽象的なぶん、記事の内容も広く浅くならざるを得ないため、このキーワードで上位表示される記事では顧客になりうる方にコミットしないのです。

そのため、検索ボリュームとしては低いミドルワード・ロングテールワードを狙った狭く深い記事のほうが、ビッグキーワードのような広く浅い記事よりもCVしやすいといえますね。そして悩みが深くなればなるほどAIでは対応しきれないので、人間の手で記事を作ることの価値が高まります。

—— AIに人間のふりをさせて架空の体験談を出力することも不可能ではないと思うのですが、Googleはこうした悪意ある記事も判定できるのでしょうか。

城所:Google側も文章を読み解いて判定できるようになってきていると言われています。とはいえ、そもそも専門的な領域になればなるほど出力したものがズレていたり不自然だったりするので、結局のところ「実体」がなければ価値のない情報の羅列になってしまうので、結果的に評価されない記事になってしまいますね。

経験×知識で成果を出すデジタリフトのSEO支援

—— こうした潮流の中で、貴社はどのようなSEO支援を行っているのでしょうか。

城所:当社としては「深さを出すコンテンツを作る」ことがAIへの対抗策だというスタンスを取っているので、どの施策においてもペルソナの作成に重点を置いています。具体的には以下のようなポイントを深堀りしていますね。

・普段どういうことを考えている読者がこの記事にたどり着くのか

・読者はなぜこのキーワードで検索しようと思ったのか

・読者は何を知りたいのか

・読者は何を得られたら満足するのか

・読者が記事を読んだ後にどういう行動をして、どういう状態になることが理想か

ここまで決めたら、それを達成できていない要因を考えて施策を決定・実行します。個別具体的な対処が必要になるSEO支援において、「人間の感情」が関わるインサイトの深堀りまで行なってペルソナの解像度を高めることはAIにはできません。幅広い層にアプローチするよりも、ニーズの高い特定層に刺さる記事を作ることでCVに貢献するというイメージです。

また深い記事にするためには記事の独自性・専門性も不可欠なので、記事作成も当社で行う場合はクライアントと何度もやり取りを重ねることで精度を高めていますね。想定したペルソナが本当に存在する人なのかどうかを確認いただくことはもちろん、クライアントの持つ業界知識などを教えていただくことでより深いコンテンツを作成します。

—— 貴社のSEOへの知見・経験とクライアントの専門知識を合わせて、深みのある記事を作るのですね。

城所:記事の作成段階でいろいろと質問させていただくこともありますし、公開前には必ずチェックいただくことで正しい知識を得られる記事になるようにしています。専門性・独自性の高い記事はGoogle側も読み解きやすいので、記事のクオリティをクライアントと協力して上げていくという方針です。

記事をたくさん作っていくのか、いいものを少量からでも作っていくのかといった企業ごとの方針も大事にして伴走しているので、SEO支援が必要な際はぜひお声がけいただきたいですね。

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デジタルマーケティングを包括的に支援する株式会社デジタリフト。SEOサービスの「Media LIFT」ではオウンドメディアの構築から運用サポートまでをワンストップで提供。
流入だけ増えて成果に繋がらないといったよくある課題も、戦略面から伴走することで解消していく。
必要に応じて記事制作代行も行っており、BtoCやニッチなBtoBまで対応。クライアントの業界理解、商材理解を徹底的に行い記事を作成するため、SEOで順位を取るだけではなく、
ユーザーにとって価値のある高品質な記事を作成できることも強み。

デジタリフト公式サイト

編集後記

専門性の高いSEO記事の作成におけるAI活用はまだまだ難しいものの、その手軽さゆえに「外部ライターがAIを使用して記事を作っているのではないかと心配するクライアントもいる」と語る城所氏。AIに対する検索エンジン側の警戒度の高まりなどを受けて、OpenAIはAIが作成したテキストかどうかを判別する「AI Text Classifier」を公開したものの、誤検出のリスクも存在するためこのツールだけで完全にAIを排除することは難しい。ところが、城所氏によるとAI対策自体は非常に簡単だという。

 

デジタリフトでは1記事ごとにペルソナをクライアントとともに深堀りし、内容についても専門性が担保されたものかを確認しながら進めるため、同社のやり方で記事作成を行えばペルソナが違っていたり、PREP法を使っていなかったりといった質の低いテキストを発見できる。城所氏は「インサイトの深堀りを人力で行い、AIが使えないレベルまで専門性を伸ばすことで、その副産物としてAI対策もできる」と胸を張った。

取材・構成:MARKETIMES編集部・中島佑馬

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