昨今のマーケティング業界ではDMPが多くのマーケターから注目を集めています。収集したマーケティングデータを一元管理し、既存・新規のマーケティング施策に活かして、効果を最大化することができます。
しかしながら、DMPという言葉は聞いたことがあるものの、具体的な概要やメリット、活用方法について詳しく知らない方もいるのではないでしょうか。DMPの仕組みが複雑なので、活用するイメージをイマイチ掴めていない方もいるはずです。
本記事では、DMPの基礎知識や種類、メリット/デメリットや活用事例を初心者にもわかりやすく解説します。
目次(クリックしてジャンプ)
DMPとは
DMPとは、「Data Manegement Platform(データマネジメントプラットフォーム)」の略称で、近年多くのマーケターから注目を集めているデータプラットフォームの一つです。DMPの読み方はそのまま「でぃーえむぴー」と読みます。
インターネット上に存在するさまざまなデータを収集・一元管理し、自社の商品・サービスに適したマーケティング施策を実施することができます。具体的にはユーザーの行動ログや購買情報、デモグラフィック情報などが収集・一元管理するデータに該当します。
ただしDMPの種類によってデータの活用方法はまったく異なります。詳しくは後述で解説する「DMPの種類」の章をご覧ください。
DMPで収集・一元管理したデータを活用することで、お問い合わせフォームから一時離脱し、再度Webサイトに訪問したユーザーだけをターゲティングしたり、一定の年収があるユーザーにのみ広告を配信したりなど、マーケティング活動において数多くのメリットをもたらします。
つまりDMPは、近年のマーケティング活動には欠かせない「One to Oneマーケティング」が実施できるわけです。
たとえば、一般消費者向けに不動産投資の事業を展開している企業が「30代男性」「年収600万以上」「投資関連のサイトをよく閲覧する」というターゲットに狙いを定めて、広告を配信できるようなイメージです。ターゲットに対して適切な広告を配信できれば、コンバージョン(資料請求やお問い合わせ)の反応も良くなるでしょう。
DMPの種類と仕組み
DMPは2種類に分けられます。
- オープンDMP
- プライベートDMP
前述で解説したとおり、どちらのDMPを使うかによって、活用方法がまったく異なります。
本章では、それぞれのDMPの概要や特徴、収集・一元管理できるデータについて詳しく解説します。
DMPの導入を検討しているマーケターの方は、正しく理解しておきましょう。
オープンDMP
オープンDMPとは、「Webサイトの閲覧・行動履歴」や「Webサイトを訪問したユーザーのデモグラフィック情報」、「SNS」などの外部サイトのデータを収集・一元管理しているクラウド型のデータプラットフォームのことです。
自社では保有していないマーケティングデータを活用して、マーケティング活動を最適化できます。
たとえば、「アパレル系のECサイトをよく閲覧する20代女性」にアプローチするために、オープンDMPのデータを活用して広告配信を行うなどの活用方法が考えられます。また自社と類似するマーケティングデータを活用して、広告運用のCPAを下げる効果も期待できるでしょう。
このように外部サイトが収集・一元管理しているデータを活用して、さまざまなマーケティング施策を実施できるのがオープンDMPの特徴です。
プライベートDMP
プライベートDMPとは、自社サイトが保有する「購買情報」や、「サイトの閲覧履歴」などのマーケティングデータを収集・一元管理するデータプラットフォームのことです。ECサイトなどの購買履歴からオフライン店舗のお客様の訪問履歴まで、幅広いデータを収集・一元管理できます。
プラベートDMPは、オープンDMPのマーケティングデータとデータを紐づけることで、さまざまなマーケティング施策に活用できます。
たとえば、ECサイト内でそれぞれの顧客にパーソナライズした商品をレコメンド機能で表示したり、「過去に購入したことがあるor購入したことがない」といったセグメントに分けてクーポン情報を配信したりなどのマーケティング施策です。
このようにプライベートDMPは自社の顧客情報にフォーカスしています。オープンDMPとの活用次第では「LTV(生涯顧客価値)の向上」や「休眠会員のサービス利用促進」の効果が期待できます。
DMPとCDPの違い
DMPと似ている仕組みに、CDPというデータプラットフォームがあります。
CDPとは「Customer Data Platform(カスタマーデータプラットフォーム)」の略称です。
自社の顧客データを収集・統合し、一元管理するデータプラットフォームを指します。
いずれもデータプラットフォームとしてデータの収集・一元管理を行う点は一緒です。
よくDMPと比較対象になることが多いCDPですが、活用方法や使用用途は明確に異なります。たとえば以下のとおりです。
【CDPの特徴や活用方法】
- 特徴:顧客単位にフォーカスしている
- 活用方法:メールやLINEなどのコミュニケーションツールと連携して配信できる
- メリット:一人ひとりの顧客に適切なアプローチができる・顧客理解を深めることができるなど
【DMPの特徴や活用方法】
- 特徴:セグメント単位にフォーカスしている
- 活用方法:自社・外部データを活用して広告配信やキャンペーンを最適化する
- メリット:多くのターゲットにアプローチができる・セグメントやニーズごとに広告を最適化できるなど
このようにアプローチできる単位が異なります。DMPはセグメント(属性)に対して広告を配信できる一方で、CDPは顧客単位で直接アプローチができます。
つまり、CDPの方が細かなOne to Oneマーケティングを実施できるわけです。
自社の目的に合わせて、CDPとDMPのどちらを活用するか考えましょう。
DMPのメリット・デメリット
ここまでご覧になった方であれば、DMPが気になっている方もいるのではないでしょうか。しかし「なんとなくDMPのイメージが掴みにくい」「結局のところ何ができるの?」と疑問を持つ方もいるはずです。
そこで本章では、DMPのメリット・デメリットをまとめました。
DMPのメリット
DMPはマーケティング活動においてさまざまなメリットがあります。
具体的には以下のとおりです。
- 各セグメントごとにマーケティング施策を実施できる
- ユーザーのモチベーション(購買意欲の段階)に合わせて広告を配信できる
- 収集したマーケティングデータを一元で管理して効率化できる
- あらゆるマーケティング施策の効果を最大化できる
- 潜在層に対してアプローチできる
- コンバージョン率のアップやCPAの減少につながる
収集したデータを各セグメントに切り分け、ターゲットに対して適切なマーケティング施策を実施できます。プロテインのECサイトによく訪れるユーザーに、フィットネス用品の広告を配信できるようなイメージです。
その結果マーケティング施策の最大化につながり、コンバージョン率のアップやCPAの減少などの効果が現れる点が大きなメリットです。
そしてなんといっても一番のメリットは、集めたマーケティングデータを一元管理できる点です。管理したデータはいつでも分析できるうえに、情報を把握しやすくなるのでマーケティング担当者の工数の削減にもつながります。
普段からGoogleタグマネージャーなどのツールを利用している方であれば、一元管理できる便利さを知っているでしょう。
上記のようにDMPにはさまざまなメリットがあります。
DMPのデメリット
いくら優れているとはいえ、DMPにはデメリットもあります。
たとえば、
- 導入費用が高い
- データの分析が難しい
などです。
DMPはこれからのマーケティング活動で欠かせないプラットフォームですが、導入する際の費用が非常に高いです。事実、DMPを導入している企業の多くは予算が潤沢にある大企業ばかりで、中小企業はまだまだ活用できる段階に至っていません。活用している中小企業もありますが、現状は非常に少ないと言えるでしょう。
仮にDMPを導入できたとしてもデータ分析を行うのが難しく、データ解析に詳しいマーケターがいないと、うまく活用できません。
DMPの導入に対するハードルの高さが、最大のデメリットと言えます。
DMPの活用事例
DMPの活用事例を3社まとめました。
- ゴルフダイジェストオンライン
- 日本航空株式会社
- KADOKAWA
それぞれの事例を詳しく解説します。
DMP事例①:ゴルフダイジェストオンライン
ゴルフダイジェストオンラインは、全国のゴルフ場の予約やゴルフショップに関する情報発信を行っているWebメディアです。本メディアの運営会社は、積極的にWebマーケティングの施策に力を入れている企業として有名です。
- 「サービスを利用したことがないターゲットに対して、適切なコミュニケーションを取れていない」
- 「既存ユーザーに加え、新規ユーザーの趣味・嗜好を的確に捉えた、コミュニケーションをインターネット上で図りたい」
- 「新たなゴルフファンを獲得したい」
- という課題と目的を抱えていたゴルフダイジェストオンラインは、解決策としてプライベートDMPの「Rtoaster」を導入しました。
会員データやWebサイトの閲覧履歴などから収集したマーケティングデータをもとに、チャネルごとにパーソナライズした配信を行うことで、ユーザーと適切なコミュニケーションを取ることに成功しています。
その結果、既存会員の約10倍以上の新規ユーザーへのアプローチができるようになり、従来のゴルフ場の予約サービスは約8倍となる実績を残しました。
DMP事例②:日本航空株式会社
航空券の予約サイトを運営している日本航空株式会社は、約10年以上に渡りプライベートDMPの「Rtoaster」を利用し続けています。
同社が保有する3,000以上を超える会員のユーザー属性やWebサイトの閲覧履歴をなどのデータを細かく収集し、レコメンド機能を活用することで、ターゲット一人ひとりにパーソナライズしたバナー配信をすることに成功しています。
従来のバナー配信を行っていたときと比べて、クリック率は2〜3倍以上になったと言われています。
DMP事例③:株式会社KADOKAWA
KADOKAWAはより大きく事業を成長させるために、DMPのデータ収集・一元管理を活用したマーケティング施策を取り入れています。
データを活用する以前のKADOKAWAは、14つ運営しているサイトの合計PVが19億と膨大なアクセスを獲得していたものの、「どのようなユーザーが閲覧しているか分からない」という課題を抱えていました。
その課題の解決策として導入したのが、「Arm Treasure Data」と言われるDMPです。サイトのアクセス情報と顧客情報を紐づけることにより、これまで不鮮明だったセグメント層の特定に成功しました。
DMPによりニーズが可視化したことで、事業の発展につなげられている事例です。
DMPを導入する際のチェック項目
DMPの魅力を理解したのであれば、導入を検討し始めているマーケターの方もいるでしょう。しかし闇雲に導入しても期待できるほどの効果は得られません。
DMP導入のために高い資金を投下し、マーケティングを最適化するのであれば、以下のチェック項目を満たしているかチェックしてみてください。
- 導入する目的は何か
- 費用対効果は十分か
それぞれ詳しく解説します。
導入する目的が明確になっているか
DMPはマーケティング活動におけるさまざまな課題を解決してくれます。
たとえば、「膨大な資金を投下して広告を配信しているものの、イマイチ効果が出ていない」「ターゲットがまったくコンバージョンまで至らない」などの課題です。マーケティングの業界で活動しているのであれば、誰もが一度は課題を抱えたことがあるはずです。
もし本記事をみているマーケターの方で、DMP導入を検討しているのであれば、「どんな課題を解決するためにDMPを導入するのか」という目的を明確に決めましょう。
現状で自社のマーケティング活動の課題をイメージできておらず、DMPを導入する明確な目的がないのであれば、DMPを活用する意味はないかもしれません。仮にDMPを導入したとしても、得られる効果は少ないでしょう。
またマーケティングの課題によっては、DMPよりもCDPを導入する方が適している場合もあります。具体的には、「これまでターゲットとしていたユーザーの購買行動の変化が激しく、広告の成果が出にくくなっている」というケースです。
仮にCDPでなくとも、マーケティング活動の課題を解決できるツールやプラットフォームはたくさんあります。
そのため具体的な課題をイメージし、どうすれば解決できるのかという目的を明確にしておかないと、本当にDMPを導入するのが正解かわからないわけです。
導入資金や時間を無駄にしないためにも、「ターゲティングの精度を高めてコンバージョン率を向上させたい」「適切なターゲットに対してアプローチしたい」などの目的を明確にしてから、DMPを導入するようにしてください。
費用対効果は十分か
DMPを導入するには、非常に高額な費用がかかります。
費用対効果が出るか見極めてからDMPを導入しないと、せっかくの資金を無駄にしてしまうこともあるでしょう。
「導入してどれくらいの期間でCPAが改善するのか」「既存顧客のLTVはどれくらいの向上が見込めるか」など、仮説を立てて予測できる効果を見立てておくことが重要です。
費用対効果の確認は忘れずにチェックしましょう。
DMPのまとめ
本記事では、DMPの概要や種類、メリット・デメリットや活用事例を解説しました。
改めてDMPとは、「Data Manegement Platform(データマネジメントプラットフォーム)」の略称です。自社や外部サイトから収集・一元管理したデータによって、さまざまなマーケティング活動の課題を解決してくれます。
昨今多くのマーケターがDMPに注目しており、導入した活用事例も増えてきているので、今後ますます市場は発展していくと考えられます。LTVやコンバージョンなどの向上を目指したい事業会社のマーケターの方は、はやめにDMPを活用できるようになっておくとよいでしょう。
とはいえ導入するハードルの高さから、なかなかDMPの導入まで至らないケースも多いはずです。
そのため、自社が抱えている課題とDMPを導入する目的、費用対効果を細かく分析して、導入するヒントをみつけてみてください。
マーケティング活動を最適化して、より大きな成果を生み出していきましょう。
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