ここ数年、拡大しているD2C事業。事業主が直接toCビジネスを手掛けられることをメリットに感じ、デジタルの持つスピード感に乗って事業を立ち上げたが、数々の課題へ直面する、というご相談が最近多いと感じます。そこで、立ち上がったD2C事業をビジネスデザインで再構築した事例を紹介します。
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スメハラ問題へ貢献するべく誕生した製品Kunkun body
コニカミノルタ株式会社Business Innovation Centerが新規事業として立ち上げた世界初*ニオイ見える化チェッカーKunkun body。あたま・耳のうしろ・わき・あし・くちのニオイを測定でき、3大体臭である加齢臭・ミドル脂臭・汗臭の見える化を実現した製品です。
2017年にクラウドファンディングでスメハラ問題へ貢献するべく生まれた製品として応援購入を呼びかけ約4800万円を集め、同時に多くのメディアへ取り上げられ大反響を呼びました。そして2018年にD2C事業をメインとして30,500円(税込)(2020年12月時点)として正式発売。ビジネストレンドの産学連携、クラウドファンディングを活用するなど、事業開発・初速立ち上げにおける成功ビジネスモデルとして、非常に優れたマーケティングを展開されました。
*出典:「Kunkun body」が「世界初」であることの証明・検証調査(2018年1月12日現在)<ESP総研 調べ>(2017年12月〜2018年1月 調査)
事業立ち上げ期から継続期へ。課題の変化へ対応
正式発売から1年経過した2019年。事業の成長による課題の変化へ対し、具体的にどこを改善すると良いのか漠然と感じ、事業のマーケティング担当者様より、電通アイソバーへご相談をいただきました。
コニカミノルタご担当者様との数多くのディスカッション、市場調査やソーシャルリスニングによって、さまざまな課題を洗い出し、ひとつ見えてきた課題は、「製品の選好性の拡張」が必要でした。
ニオイを見える化する製品コンセプトの先進性、そしてスメハラ問題へ貢献する共感性をうまくクラウドファンディングによって捉え、立ち上げの初速スピードとして推進させた1stフェーズ。次の更なる事業成長を見据えると製品の選好性の拡張が必要でした。
CX視点を起点に課題の突破を図る
購入ユーザーの多くは、ニオイ測定後に制汗スプレー・シートを使用し改善を図る。日々、その測定作業を繰り返す中で、測定を面倒に感じ、測定せずに制汗スプレー・シートを使用してしまう行動フローへ戻ってしまうケースがあると感じました。
そこで、ニオイへ対してより深く考察ができるようにと、ニオイ評論家桐村里紗医師へコンタクトを取り、共にプロジェクトを進めるメンバーとして参画していただくことになりました。
桐村里紗医師は「ニオイは体調のバロメーター」と提唱し、ストレスフルな仕事、無理なダイエット、大量の飲酒など、生活習慣が乱れた時にニオイはバロメーターのように発生する。つまり、ニオイケアは、エチケットだけでなく、ヘルスケアとしての価値も内包していました。
そこで、我々は、CX視点に立ち返り、ニオイケアに健康価値を付加する“意味のイノベーション”を図り、ニオイへ対する体験の解像度を上げることにしました。
CX視点とマーケティング4P視点の掛け算が事業クリエイティブをドライブ
ニオイをエチケット文脈だけでなく、ヘルスケア文脈として体験の解像度を上げる。そのCX視点に気づいた時、マーケティング4P視点と照らし合わせると事業を更にドライブさせるビジネスデザインが見えてきました。
Kunkun bodyをエチケット製品だけでなく、ヘルスケア製品としてもポジショニングを取る。そのことで、売場の拡張、価格問題が解消される。製品・価格はそのままに戦い方をクリエイティブすることで、事業課題であった選好性の拡張が推進されるビジネスデザインとなりました。
【事業クリエイティブ・コアアイデア】
製品の選好性を拡張。エチケット市場に加え、ヘルスケア市場の二つで戦う。
事業の成長を見据え、製品の選好性を拡張し、現製品ポジションであるスメハラ問題へ貢献するエチケット市場に加え、ニオイケアに健康価値を付加する体験の解像度を上げるヘルスケア市場の二つで戦う。
CX Designによる一気通貫した統合ソリューション
単発的な広告キャンペーンではなく、事業へ対する本質的課題と向き合い、事業をクリエイティブすることで、ソリューションを開発しました。
健康寿命を伸ばすことは、すでに世界全体の課題。 コニカミノルタは、ニオイの新しい概念、 生活習慣臭を普及させることで、 健康寿命を伸ばすための新しい可能性を提示。日本中で注目を集めることとなりました。
- プロジェクト発足直後、190%のドラスティックな売上増を達成(前月比)
- 合計200以上のメディア露出を達成。広告換算費は約2億円を超えた。
スピード重視のD2C事業。つまり運営しながらのビジネスデザインが必須
ビジネストレンドワードとなっているD2C事業。さまざまな業種のeコマース化が進み、時代の波に取り残されないよう、スピード感を持って事業を立ち上げようとするケースが多い昨今。通常の事業なら事前に防いでいる落とし穴や、時流の変化への対応も、弱点を検証・カバーする前に圧倒的なスピード感でD2C事業は進んでいきます。そこで大事な点は、事業を運営しながら、ビジネスデザインを並行して進める柔軟性が必要です。そこは、事業コンサルだけではなく、具体的なソリューション・エグゼキューションも同時に進めていく必要があります。CX Design Firmである電通アイソバーは「事業コンサルと具体ソリューション」の両輪を行き来しながらアイデアを検証するプロジェクト遂行によって、本質的な課題解決へ取り組みます。
●関連ニュース 電通アイソバー、コニカミノルタと実施した「ニオイから、健康習慣をデザインする。 生活習慣臭 啓発プロジェクト」が「2020年度グッドデザイン賞」を受賞!
●世界初*ニオイ見える化チェッカーKunkun body
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