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知らぬ間に騙し取られる広告費 Spider Labsに聞く不正広告「アドフラウド」の手法・事例と対策

アドフラウドイメージ画像

自社の広告費が、知らない間に反社組織に流れている——      。デジタル広告の仕組みが複雑化する中で、新たなサイバー犯罪として注目されているアドフラウド(不正広告)。月間数百万円規模の被害に遭った企業も存在するアドフラウドの実態や手法・今後の予測などについて、国内発のアドフラウド対策ツール「Spider AF」を展開するSpider Labsの小鹿正博氏に取材した。

非合法サイトの運営ほう助に気づかず訴訟リスクも

—— 「不正広告」として急増するアドフラウドですが、具体的にどういった不正を働くのでしょうか。

小鹿:一般的には「bot」と呼ばれる自動プログラムを人的かつ不正な手法で作りだし、広告表示やクリックを水増しして広告報酬をだまし取る行為のことを指します。特に悪質なものでは、アドフラウドの実行者がサイトの構築・運営を行い、広告配信面を設置して広告を呼び込むケースもありますね。botを利用した不正広告の流れ広告主は知らない間に不正なサイトに自社広告が出稿されたうえ、広告費を根こそぎ奪われることになります。少し前に話題になった海賊版のマンガ閲覧サイト「漫画村」にも、こうしたアドフラウドが使われていました。

また競合他社の広告費を削る嫌がらせ目的のアドフラウドもあります。例えば検索連動型広告で表示される競合他社の広告をクリックして予算を削り、最終的に広告表示を止めることで自社の露出を増やすという手法ですね。こうした手法は平日日中に競合先からのアクセスが非常に多くなるといった特徴があるので、こうしたアドフラウドも「Spider AF」を使えば一目瞭然でわかります。同一ユーザーからのアクセス—— アドフラウドに出稿していた広告代理店側も、違法サイトの運営をほう助したとして裁判になりました。

小鹿:漫画村の件では、代理店側も広告配信先が不正広告だったことを知らずに出稿していたため、被害者としての側面も持っています。アドフラウド運用者が「隠し広告」として漫画村に広告出稿する仕組みを作っていて、代理店側はそれを知らないまま出稿してしまったというケースですね。アドフラウドは運用型広告の複雑性を突いた行為なので、デジタル広告という媒体そのものが抱えている構造的な問題でもあると考えています。

—— 知らず知らずのうちに非合法なサイトの運営をほう助してしまい、結果的に訴訟を起こされたり、賠償金の支払いを課されたりしてしまうという怖さもあるのですね。

小鹿:とはいえ代理店側も必要な確認を怠り、広告がアドフラウドに流れてしまう状態を作っていたという点では過失があるので、完全な被害者というわけではないと思っています。故意・過失に関わらず、広告主としては信頼して預けていた広告費が反社会的な勢力に流れていることになるので、広告業界全体でアドフラウドに対して積極的な対策をすべきですね。

—— 広告を出稿している会社の何割が被害に遭っているのでしょうか。また、被害例などありましたらお教えください。

小鹿:当社の調査レポートでは、各媒体におけるフラウド率の平均が4.37%という結果が出ています。被害の例として、月間広告費の半分以上にあたる約600万円がアドフラウドに流れていたという事例がありますね。ネットワーク別のアドフラウド率必要なのはマーケター側の当事者意識

—— そうしたリスクがあるにもかかわらず、対策が進んでいない理由は何でしょうか。

小鹿:広告主や運用者のデジタルマーケティングリテラシーが大きな理由です。たとえば広告代理店に出稿を依頼する場合、代理店側は自分たちが適切に運用していると思っているので、広告主が設定するゴールに達しなくても「こういう結果しか出ませんでした」という結果ベースで伝えてしまい、広告主からしても「広告運用はそういうものなんだな」と理解して終わってしまうというものです。

まずは「なぜこれだけ広告出稿があったのにゴールに届かないのか」という疑問を持つことが必要ですね。被害を防ぐためには、こうしたマーケター側の当事者意識が重要だと考えています。

—— 狙われやすい企業の特徴を教えてください。

小鹿:当事者意識がない企業は最も危ないですね。多額の広告費をかける中堅企業でも月数百万円規模のデジタル広告を出しているところは多かったりするので、そうしたところが一番狙われやすいです。例えば月300万の広告費を運用している会社の場合、広告費の4%がアドフラウドに流れると月当たり12万円が無駄になります。年間で換算すると144万円になるので、本来見込み客に届くはずの144万を無駄にしてしまうのは怖いところですね。

また、広告費が多いほどアドフラウドの被害額も増えていきます。月あたり数千万円の広告費をかけている会社が被害に遭ったケースも珍しくないので、広告費に多くのコストをかけている企業も要注意です。

—— こうしたアドフラウドは、誰がどういった目的で行なっているのでしょうか。

小鹿:反社会勢力が活動資金を得るために行なっているというのが一般的な見方です。海外の調査でもそうした勢力に流れていると推測されているのですが、デジタル広告の仕組みがわかっていれば簡単に実行できてしまうため、不正広告を資金源とする反社会的勢力は国内外を問わず存在すると見ています。

2026年には全世界での被害額が15兆円を超えると推測されており、反社組織の収入源の中で2番目に大きいものになるといわれていますね。

どういったサイトに自社広告が貼られているかを見ること自体は出来るのですが、アドフラウドを実行しているサイトをブロックする手間なども含めると、確認作業には莫大な工数がかかります。当社のSpider AFのようなツールを使えばこうした工数も省略できるので、すぐにでも導入いただきたいですね。

国も動くアドフラウド対策

—— アドフラウドに対する法的な整備についてお聞かせください。

小鹿:アメリカではアドフラウド実行犯に対しての逮捕・起訴が行われ、罰金の支払いが命じられたケースもありますが、日本ではまだまだこれからですね。現状では直接アドフラウド実行犯を取り締まる法律がないため国内での逮捕例もないのですが、取り締まりに向けた政治的な動きはすでに始まっています。

昨年4月に内閣官房から出された「デジタル広告市場の競争評価」という報告書では市場課題の1つとしてアドフラウドが挙げられており、こうした課題に対応するため今年8月に改正された「デジタルプラットフォーム取引透明化法」では、デジタル広告分野もその対象として追加されました。

当社にも警察関係者から「アドフラウドについて教えてほしい」という問い合わせがあったりするので、今後もこうした法整備は進んでいくと思っています。

—— Googleをはじめとするプラットフォーム側では対策をしていないのでしょうか。

小鹿:対策自体はしているようなのですが、実際にどのような対策がなされているかは開示されておらずブラックボックス化しています。とはいえ100%GoogleやYahooが悪いわけではなく、アドフラウド実行者はさまざまな手法で不正広告を行なおうとするため、どうしてもいたちごっこになってしまいます。

一見普通に見えるページもアドフラウドが仕込まれているので、Google側でも検知することが難しいというのも理由の1つです。Spider AFで検知した事例では、資料請求をゴールと設定した広告のCVRが90%以上という、極端に高い数字を叩き出しているページがありました。こういったケースでのCVRは通常であれば数%程度なので、botなどを使った機械的な動きでしかありえない結果です。実際に問い合わせフォームに記載された電話番号がでたらめであったり、メールアドレスが不明だったりしたため、簡単に整合性が取れました。SDCで発生したプレースメント詳細

「Spider AF」をセキュリティソフト感覚で導入

—— 根絶するのは難しく、広告主や運用側で対策を行なわなければならないのですね。

小鹿:デジタル広告は高いCV率を持つ媒体に優先的に予算を割り振るため、何も対策をしなければ本来集客を見込める媒体に広告が出稿されず、アドフラウド側に流れて行ってしまいます。そのため広告主・代理店どちらも明らかに異常なCVRを持つサイトに気づかない場合、莫大な額の広告費が無駄になってしまいます。そうした事態を防ぐためにも、アドフラウド対策ツールは導入するべきですね。

—— 被害の発生・拡大を防ぐためにも、早めの導入はどこの企業も必須ですね。

小鹿:例えばコートなどの冬物商材を売るために、10月や11月だけ一時的に広告費を上乗せすることはよくあると思うのですが、広告費が増えると必然的にアドフラウドも増えてしまうので、想定していた費用対効果が得られないこともあります。スポット的に予算を投入しても、その予算が狙われていると考えるべきですね。

—— マーケターは、アドフラウドに対してどう向き合うべきなのでしょうか。

小鹿:「自社も被害に遭っているかもしれない」という当事者意識を持つことと、Spider AFのようなアドフラウド対策ツールを導入することが望ましいと思います。特に対策ツールについては、自分自身のPCやスマートフォンに、ウィルスセキュリティソフトをインストールするような感覚で導入してほしいですね。Spider AFも、一種のセキュリティソフトのように見ていただければと思います。

しかしこうした意識はマーケターだけではなく、裁決の権限を持つ方にも必要です。上層部が企業のお金がどれだけ無駄になっているかを認識することで、マーケター側もアドフラウドを意識して運営していこうというモチベーションにつながると思います。

まずは無料トライアルで診断

—— 貴社の「Spider AF」ではどのようにアドフラウド対策をされるのでしょうか。導入コストについてもお教えください。

小鹿:アドフラウドに流れている広告費の検知やブロックを行ない、不正クリックを防ぐことがメインの機能になります。それに付随してブランドの価値を損なう配信先を検知してブロックすることも可能で、アダルトサイトのような低俗なサイトへの広告出稿を未然に防げるのも特徴です。

方法としては、企業様のランディングページやコンバージョンするページに当社独自の広告配信タグを設置していただきます。その後は当社でクリックやコンバージョン情報などを解析し、不正な広告配信先を検知・ブロックするという仕組みです。

高い検知率や日本企業ならではの充実したサポート体制を評価いただき、現在は東証1部上場の大手企業も含め数百社ほどの企業様に導入いただいています。導入コストはサポート体制などによって変わってくるのですが、月あたり3万円からとなっています。Spider-AF-FLOW—— 導入後はすぐに対策できるのでしょうか。

小鹿:まずは無料トライアルで被害状況を診断させていただいてからになります。その後は検知結果をもとに、アドフラウドを行なっているサイトの広告ブロックが可能になります。デジタル広告はアドフラウドと隣り合わせなので、現状で被害がなくとも将来的な被害を予防するためにSpider AFを導入いただきたいですね。

—— 貴社ではアドフラウドだけではなく、不正転売の対策も行なっているそうですね。

小鹿:Spider AFのシステムを応用した、不正購入検知サービスも展開しています。例えば化粧品や健康機能食品は「初回限定特別価格」のキャンペーンを打ち出しユーザーを集めることがよくあるのですが、不正転売者は人を集めて初回限定価格の商品を買わせ、買った商品を正規価格の8~9割程度でリピーターに販売するという転売モデルが出来上がっています。

こうした転売手法については、一般購入客と異なる「動き」をしたユーザーを検知してブロックすることが可能です。この仕組みを導入いただいたあるクライアント企業では、検知したユーザーに対し商品を発送しなかったそうなのですが、それに対してクレームが来たのは100件中1~2件だったそうです。従来はこうした怪しいユーザーの排除を目視で行っていたそうなのですが、当社の技術を活用して、高い成果と確認工数の削減を実現できました。

今後も増加するアドフラウド

—— ネット広告におけるセキュリティは今後どのように展開していくのでしょうか。

小鹿:現時点で全世界でのアドフラウド被害額は9兆円という試算がなされていますが、今後も右肩上がりに上がっていくと予想されています。4年後の2026年には15兆円まで膨れ上がると予想されており、アドフラウドを実行する人が増えていくに従って企業の損失額も増えていくと推測しています。またそれに伴って、アドフラウド対策ツールの開発も加速すると思っています。

今後はより一層、企業側がセキュリティやプライバシー規制などを意識する必要があるのかなと思っています。国内では、今年4月に改正された個人情報保護法案でCookieの情報が適用対象になったりという動きがあり、各企業が対策に動いていますね。

さらに世界に目を向けると、サイバーセキュリティの問題がビジネスにも影響してくるため、どの国も意識して対策していこうという動きが見受けられます。ネット広告をはじめセキュリティ関連の市場や技術は今後も加速していきますし、企業1社1社が当事者意識をもって目を向けるべきなのかなと思います。

—— 貴社としては、そうした動向にどう対応されるのでしょうか。

小鹿:当社は日本発のサイバーセキュリティーカンパニーとして去年から世界進出を本格的に始動しており、アメリカやヨーロッパなどの英語圏を中心に加速度的に展開しています。将来的には日本だけではなく、全世界でのアドフラウド対策ができるパイオニアでありたいと思っています。Spider Labs・小鹿氏

Spider Labs株式会社・PR 小鹿 正博(こしか まさひろ)氏
大学卒業後、大手アパレル、輸入代理店などさまざまな職種のBtoCおよびBtoB向けPR、マーケターとして約10年間活動。2021年12月株式会社Spider Labsに入社。SNSおよびWEBを駆使したプロモートを得意とし、過去手がけた商材では幅広い認知活動を行う。Spider Labsでは過去の経験を活かしたイベントの運用企画、各種メディア運用企画、リード獲得などのPR活動を行う。

Spider AF ブランドイメージ

Spider AFは、誰でも簡単にアドフラウド対策を行えるよう自動化・非属人化に特化したアドフラウド可視化・対策ツールです。2017年7月から提供を開始して以来アドネットワーク事業者様をはじめ代理店様、広告主まで広くご利用頂けるツールを目指しています。

 

デジタル広告業界への信頼を高める世界最高水準の認証機関「Trustworthy Accountability Group(TAG)」の不正防止部門から日本及びAPACで初めて認証を取得しており、より信頼性の高い世界最高水準のアドフラウド対策を提供しています。

 

2021年からTAGの日本版といえる「JICDAQ」の無効トラフィック対策認証も取得しております。JICDAQの認証取得によって、我々はグローバルスタンダードを保持し、日本市場の不正対策のリーディングカンパニーとして広告業界の健全化に取り組んでまいります。

 

Spider AF 公式サイト

編集後記

D2Cの調査によると、2022年のインターネット広告媒体費は全体で2兆4,811億円(前年比115.0%)まで成長する見込みだ。デジタル広告市場が順調に拡大する一方で、アドフラウドの魔の手は着実に企業へ伸びている。次から次へ新たな手法が編み出される不正広告自体をなくすのは不可能に近いという現実がありながらも、小鹿氏は「アドフラウドのない世界をめざしている」と語った。「Spider AF」は、今日もインターネットの世界で静かに網を張っている。

【関連リンク】

取材・構成:MARKETIMES編集部・中島 佑馬