予定の共有・相談や整理のために複数のアプリを使いこなすビジネスパーソンも少なくない。そんな中、家族や友人・同僚など身近な人とカレンダーをシェアする共有カレンダーアプリ「TimeTree」内の新機能「公開カレンダー」の人気が高まっている。グローバルで5500万以上の登録ユーザーを持つTimeTreeは、ユーザーの4割超が日本在住で、毎月100万近くの登録ユーザーが増えているという。TimeTreeのマーケティング戦略や将来の展望について、株式会社TimeTree代表取締役社⻑・深川泰⽃氏に伺った。
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イベント情報プラットフォーム「公開カレンダー」の利用について
—— 公開カレンダーの提供を開始したきっかけと主な目的について教えてください。
株式会社TimeTree代表取締役社⻑・深川泰⽃氏(以下・深川):私はもともと音楽が好きなのですが、「SNSで見かけるライブ情報をすぐ忘れてしまう」という個人的な悩みがコンセプトのもとになっています。あらゆる情報がSNSで流れる現代社会においては、何か情報を流しても数分後には忘れられ、そのまま見つけられなくなって消えてしまいがちです。そうした情報がカレンダーの形で日付と共に整理されていたら、すごく便利ではないかと考えたことがきっかけですね。
カレンダーや予定と連動させたい便利な情報はたくさんありますし、そういった情報を届けたいと思っているアーティストやお店などのイベント情報発信者もたくさんいると思ったことも開発理由の1つです。カレンダー上で自分の予定とあわせて公開カレンダーの情報を確認できるようにしたことで、数多くのユーザーさんがTimeTree上で「今日何があったっけ?」「週末どうしよう?」といった確認・相談をしてくださっています。
—— 公開カレンダーを利用することで、ユーザーにはどのようなメリットがありますか?
深川:これまでTimeTreeでは、家族やカップル・部活やサークルなど、クローズドなコミュニティーでの予定共有にお使いいただける「共有カレンダー」を提供してきました。例えば、共働きのご家族ではお子さんの保育園行事・学校行事や週末のおでかけ情報をシェアしたり、カップルでは互いの仕事やバイト予定を「見える化」してデートの日を決めたりといった形です。
公開カレンダーを利用いただくと、例えば自分の好きなアーティストやアイドルのTV出演情報やコンサート情報といった予定情報を、自分の共有カレンダーの予定と見比べながらチェックできます。アーティストやアイドルだけでなく、セール情報や美術展の情報・地域のお祭り情報など、行動決定に役立つ情報がいろいろとウォッチできます。
公開カレンダー機能自体のプロモーションはまだまだこれからですが、カレンダーオーナーの方々から、ファンの方に喜ばれるカレンダーを提供してもらうことが何よりのプロモーションになると考えています。ユーザーのみなさまに使っていただくことが何より重要なので、「使ってよかった」と思っていただけるよう、活動の情報発信のお手伝いができるよう機能強化を継続していく予定です。
マーケティング戦略について
—— 新規ユーザーを獲得するための主要なマーケティング戦略を教えてください。
深川:TimeTreeにおいては「カレンダーを共有する」ことがプロダクトのコアなので、「誰かが誰かを誘ってくれる」こと自体が新規ユーザーを獲得することにつながっています。 そのため、プロダクトとして他人を誘いやすく、かつ他の用途でも誘おうと思っていただけるような満足感を体験してもらえる機能、提案などを自然に組み込むようにしています。
TimeTreeは「周囲の人を誘いやすくすること」を軸にしているので、プロダクト外での取り組みとしても「どんなコミュニティならTimeTreeに誘ってもらえるか」を考えたコミュニケーション設計を意識しています。 マーケティングはプロダクトと切り離せないため、こうした集客導線は常に意識していますね。
—— ユーザーからのフィードバックはどのように活かされていますか?
深川:実際にTimeTreeを使われているアイドル運営の方やVTuberの方など、いろいろな方にお話を伺っているのですが、「どのようなシーンで、どういった課題感のもとご利用いただいているのか」を理解しながら新機能開発を進めています。
たとえば「今月のイベント予定」を画像にしてXで投稿している方が多いのですが、急な変更が入るなど過去に投稿したものがリポストされた場合は訂正が困難になります。そもそも予定画像の作成が大変という声もいただき、こうした課題感を解決するため「公開カレンダーに登録したこの先2週間の予定を画像にする機能」を開発しました。
ウェブサイトへの埋め込み機能など、インタビューから見つかった課題や機能も多いですね。TimeTreeにはこうした「ユーザーインタビュー文化」が根付いており、製品の改善においてもこの文化を最大限活用しています。
—— ユーザーコミュニティとの絆を深めるために、どのような点を意識されていますか?
深川:「その方の生活・活動に興味を持って話を聞く」「できれば現場に行って楽しむ」という2点を大切にしています。そのためTimeTreeの開発メンバーも、公開カレンダーの開発をきっかけにアイドルやお笑いのライブに行くようになりましたね。その活動の温度や現場の空気感を知ることは欠かせません。
—— 世代や男女などで公開カレンダーの使い方の違いはどういうものがありますか?また、なぜ上記ヘビーユーザー層にTimeTreeの公開カレンダーが愛用されていると考えていますか?
深川:公開カレンダーの種類によって使い方は如実に違います。例えば楽天市場のカレンダーはフォロワーの70%が女性ですが、Abemaサッカー試合日程カレンダーは男性が60%です。 我々は現状、公開カレンダーを通していくつかの価値をご提供できていると感じています。
例えば「アイドルやタレントへの推し活」といった、自分の生活になくてはならない「楽しみ」を与えてくれるものについて、スケジュールが漏らさず分かる価値や、「楽天市場のセールカレンダー」など、自分にとってお得なものや便利な情報を見逃さない価値などです。 そういった価値提供がヘビーユーザーの方々が公開カレンダーを使ってくださっている理由に繋がっていると思います。
技術開発と将来の展望について
—— 今後、TimeTreeをどのように展開されるのでしょうか。具体的な追加予定の機能や、サービス拡張の計画などがあれば教えてください。
深川:プロダクト的には、クローズドな共有カレンダーとパブリックな公開カレンダーの両方が自然に利用できるようなUX設計を模索している最中です。今後は公開カレンダーのオーナーと、それをフォローするユーザーどちらにも便利に使っていただけるような、さまざまな機能を追加していきます。
たとえばユーザー視点においては、自分の予定を見ている時に自然と公開カレンダーのイベント情報に気づけるようにしていきます。特に気になるイベントは「出演者決定」などの追加情報を受け取ったり、TimeTree上で公開カレンダーを探すことができるような機能も搭載する方針です。オーナー側には、カレンダーへの訪問数や登録されている予定の閲覧数を分析できるアナリティクス機能や、カレンダーのフォロワー向けにより情報を届けやすくする機能などを提供予定です。
カレンダーシェアアプリ「TimeTree」は、共有とコミュニケーションを前提にしたカレンダーサービスです。家族、パートナー、サークル、職場など複数人数の予定共有が簡単にできて、目的に応じたカレンダーを複数つくることができます。2015年3月24日よりサービスの提供を開始、2024年4月には全世界で登録ユーザー数が5,500万を突破しました。「スマホの中の壁掛けカレンダー」として、ユーザーのみなさまの毎日の生活の中で幅広くご利用いただいています。
編集後記
SNSを通じて趣味や嗜好をシェアすることが一般的になった昨今、学生の間では位置情報アプリを活用して互いの居場所を「共有」することも珍しくない。TimeTreeは、「共有カレンダー」と「公開カレンダー」の2つの機能を通して、仕事のスケジューリングから「推し活」まで幅広く対応できるアプリだ。
情報の海に大切なものを落としがちな現代人にとって、「必要な情報を見落とさないようにする」ことは非常にニーズが高いと言える。取材の中で、深川氏は「アイドルやYouTuberなどTimeTreeを使うインフルエンサーのファンから、SNSを通じて『情報が流れずに届いた』という感想や、『イベント予定を見ながら休みなどを計画しやすい』といった声が届く」と語った。
新規顧客の獲得が難しい昨今では、ロイヤリティを高めるためのファンマーケティングに活路を見出す企業も多い。TimeTreeの活用を通じ、キャンペーンの締切日などを入力してエンゲージを高めるなどさまざまな施策に可能性が見出せそうだ。
構成:MARKETIMES編集部・中島佑馬
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