自社のマーケティング活動をより最適化するために、「DSP」の導入を検討しているマーケター・事業責任者の方もいるのではないでしょうか。DSPは広告配信の効果を上げるだけではなく、入札調整なども自動で行ってくれるので、昨今の広告の運用担当者には欠かせないツールになりつつあります。
とはいえDSPという言葉は知っているものの、具体的な仕組みや効果について、詳しく知らない方もいるはずです。
本記事では、DSPの基礎知識やメリット/デメリット、提供している主要会社を解説します。
「DSPの仕組みがイマイチよくわからない」
「DSPを導入するメリットやデメリットを具体的に教えて欲しい」
このような疑問・要望がある方はぜひ最後までご覧ください。
目次(クリックしてジャンプ)
DSPとは
DSPとは、Demand-Side Platform(デマンドサイドプラットフォーム)の略称です。 広告主の広告配信や掲載媒体、ターゲティングを一括して管理・実行し、広告の効果を最大限高めることを目的としたツールを指します。
DSPを活用することで、ユーザーに「枠単位」の広告でアプローチするのではなく、「ユーザー単位(興味や関心、年齢などの属性)」に応じて広告配信ができるようになります。たとえば、「時計に興味のある30代男性」「会計ソフトの導入を検討しているビジネスパーソン」「アパレル系のECサイトをよく閲覧する女性」などのイメージです。
つまり、ユーザーそれぞれに適した広告配信「One to Oneマーケティング」が実現できるので、自社の売上アップに繋がりやすくなるメリットがあります。
さらに、広告予算・ターゲット・バナーの3つを設定しておけば、入札調整や広告の最適化などはDSPが自動で行ってくれます。広告配信にあまり時間をかけたくない企業や運用者にとって、非常に魅力的ではないでしょうか。
DSPの導入費用は高額であるものの、うまく活用できればマーケティング活動において大きな効果を生み出します。
そんな魅力的なDSPは、どのような仕組みで広告配信を行っているのか見ていきましょう。
DSPの仕組み
DSPで広告配信が行われる仕組みはシンプルです。
サイトに訪問したユーザーの情報(性別や年齢など)を取得し、SSP(Supply Side Plarform)というプラットフォームにリクエストを送ります。SSPに送られてきたリクエストをもとに、「どのDSPが広告配信するか」「いくらで入札するか」などのオークションを行い、それぞれのDSPごとに配信する広告が1つ決まります。
各DSPからオーディション結果をSSPに送信し、SSPから配信先のサイトにもっとも高額な入札額が伝わります。
最後にサイトから落札したDSPに直接リクエストを送り、広告配信が開始されます。
一見複雑なように見えますが、DSPの仕組みはシンプルです。
DSPとSSPの違い
前述で解説したとおり、SSP(Supply Side Plarform)を経由してDSPのオークションを行い、配信される広告が決まります。
密接な関係があるDSPとSSPですが、具体的にどのような違いがあるのか見ていきましょう。
SSPとは、「Supply-Side Plarform(サプライサイドプラットフォーム)」の略称で、Supply-Sideには「供給側」という意味があります。
サイトの広告枠の販売を行ったり、広告収益を最大化できるようにサポートしたりなどの役割を持つため、メディアで広告収益を上げている運営者には欠かせないツールです。
一方でDSPの「Demand-Side」には、「需要側」という意味があります。前述で解説したとおり、広告媒体やターゲティングを一括管理・実行できるツールです。
つまりDSP(需要側)とSSP(供給側)は対となる関係性で、両者が機能することで大きな広告の効果を発揮します。逆にどちらか片方が機能しないと、まったく効果は現れません。
このようにDSPとSSPは深い関係にあるものの、それぞれの違いは明確です。混在して覚えないようにしましょう。
DSPを導入するメリット3選
DSPのメリットを3つまとめました。
- モチベーションが高いユーザーに広告を配信できる
- 類似ユーザーに対して広告を配信できる
- 入札単価や配信の調整などの工数を削減できる
それぞれのメリットを詳しく解説します。
モチベーションが高いユーザーに広告を配信できる
DSPは、ユーザーのCookieや行動履歴などの情報から、それぞれのターゲット属性(年齢や趣味・嗜好など)ごとにセグメントができます。そのため、商品やサービスを利用するモチベーションが高いユーザーにのみ広告を配信して、高いコンバージョン(購入やお問い合わせ)を獲得することができます。
たとえば「自社に関連する商品に興味を持つユーザー」や「類似サービスのホームページによく訪れるユーザー」などとターゲティングできます。枠ではなく「人」に対してピンポイントでアプローチでき、高い広告効果を生み出せるのがDSPのメリットです。
類似ユーザーに対して広告を配信できる
DSPのメリットは、モチベーションの高いユーザーにアプローチするだけではありません。
過去に資料請求やお問い合わせ、購買活動などのコンバージョンに到達したユーザーと、類似しているターゲットに対して広告配信できる点も代表的なメリットです。
類似しているターゲットに対してアプローチできれば、通常のターゲットと比べて広告の効果をより大きく上げることができますし、CPAの減少などにもつながります。
つまり広告の費用対効果が良くなるわけです。
入札単価や配信の調整などの工数を削減できる
DSPは収集したデータから、配信している広告を自動で最適化してくれます。
手動でバナーの選定や入札単価の調整などを行う必要がないので、広告運用者の工数を削減でき、広告配信にかけていた人的・時間的リソースを他のところに使えるようになるわけです。
また自動で最適化してくれるので、社内に広告運用のノウハウ・リソースがなくても、効果のある広告配信ができます。
DSPを導入するデメリット2選
DSPのデメリットを2つまとめました。
- 導入する際に初期コストがかかる
- 広告配信先の情報が開示されない場合がある
それぞれのデメリットを詳しく解説します。
導入する際に初期コストがかかる
DSPはほかの広告手法とは異なり、ツールの導入に膨大な初期コストがかかります。前述で解説したとおり、導入できれば大きな広告効果を生み出せる可能性はありますが、最初にまとまったコストが必要となる点はデメリットとなるでしょう。
またDSPの導入には、数ヶ月から数年単位の契約期間が設けられている場合があり、費用対効果が合わなくても途中でやめられない可能性もあります。そのため導入する際は慎重に行動し、しっかり費用対効果があるか確認してから意思決定を行うと良いでしょう。
広告配信先の情報が開示されない場合がある
DSP広告を提供する会社の中には、広告配信先の情報を開示してくれない場合があります。そのような場合は、どの媒体に広告が配信されているかわからないうえ、自社の商品・サービスとはまったく関連のない媒体に広告が掲載される可能性もあります。
最悪の場合はこれまで、自社で築いてきたブランドイメージを損ねるような媒体に掲載されるリスクもあるわけです。
当然ながら自社とは関連のない媒体に広告が掲載されても、大きな効果は現れません。そのため、特別な理由がない限り、広告配信先の情報を開示してくれるDSP広告の会社を選ぶと良いでしょう。
DSPの導入がオススメできる企業の特徴
DSPの導入は以下のような現状・課題を抱えている企業にオススメです。
- すでにリスティング広告やSNS広告で成果を出している
- 既存よりもさらに大きな広告の成果を狙っている
- 予算はあるのに広告で大きな効果を出せていない
- 事業(商品・サービス)の認知・集客をもっと拡大したい
- 広告配信の工数を減らしたい
たとえば、すでにリスティング広告で成果を出している企業は、顕在層/準顕在層に対して積極的にアプローチをしているはずです。
そこでDSPの高度なターゲティング機能を活用し、潜在層や既存顧客の類似ユーザーまでアプローチの幅を広げれば、より大きな広告の成果を生み出すことができます。
もし上記の項目に該当するのであれば、ぜひDSPの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
DSP広告を提供している主要会社
DSP広告を提供している主要会社を7社まとめました。
- 株式会社マイクロアド
- 株式会社フリークアウト
- 株式会社CRITEO株式会社
- 株式会社プラットフォーム・ワン
- 楽天株式会社
- 株式会社クロスリスティング
- 株式会社ソネット・メディア・ネットワーク
それぞれのDSP広告の概要や特徴をわかりやすく解説します。
株式会社マイクロアド(UNIVERSE Ads)
株式会社マイクロアドは、 「UNIVERSE Ads(旧:MicroAd BLADE)」というDSP広告サービスを提供しています。
ユーザーの情報に関するデータをたくさん収集・管理しているのが特徴です。そのため、あらゆるターゲット属性のデータを組み合わせることで、ほかのDSP広告と比べても精度の高いターゲティングが実現できます。
広告配信に安定した効果を求めるなら、株式会社マイクロアドの「UNIVERSE Ads」がおすすめです。
株式会社フリークアウト(FreakOut)
株式会社フリークアウトは、「FreakOut」というDSP広告サービスを提供しています。
FreakOutは、数あるDSP広告サービスの中でも国内最大級の規模で、月間8,500億インプレッションを超える広告在庫を保有しているのが特徴です。ターゲティングの精度も優れており、FreakOut独自の技術と豊富なデータを用いて、広告配信の効果を最大限に上げてくれます。
圧倒的なリーチ数を獲得したい企業は、株式会社フリークアウトの「FreakOut」を視野に入れてみましょう。
CRITEO株式会社(Criteo)
CRITEO株式会社は、「Criteo」というDSP広告サービスを提供しています。
Criteoは、AdGenerationやfluctをはじめとした、多くのSSPと提携を結んでいるのが特徴です。Yahoo!Jpanとも提携している貴重なDSPでもあります。
膨大なユーザー情報とDSP独自のアルゴリズムで、認知度向上やコンバージョン率アップなど、マーケティング活動であらゆる効果を生み出してくれます。ユーザー一人ひとりに最適化した広告配信は、CPAの減少にも繋がるでしょう。
株式会社プラットフォーム・ワン(MarketOne®)
株式会社プラットフォーム・ワンは、「MarketOne®」というDSP広告サービスを提供しています。
豊富な広告在庫とクリーン&セーフ(安心・安全性)が特徴的なツールです。国内の有名企業をはじめとした多くの企業でツールが活用されています。
またMarketOne®であれば、国内のビデオ・オン・デマンド(VOD)サービスのプレミア枠を買い付けることもできます。動画広告を主軸にしている企業は、ツールの活用次第で大きな効果を生み出せる可能性があるでしょう。
楽天株式会社(RMP-Display Ada)
みなさんが良く知る楽天株式会社は、「RMP-Display Ada」というDSP広告サービスを提供しています。
1億以上の会員を保有する楽天市場のターゲット情報(属性や購買履歴)をもとにした確かなターゲティングで、狙ったユーザーに対して広告配信ができます。たとえば、「トレーニングに興味がある」ではなく「プロテインのページをよく閲覧している/または購入したことがある」というユーザーに狙いを定められるイメージです。
ユーザーの行動から推測して高いターゲティングを実現したい方に、おすすめのDSP広告サービスです。
株式会社クロスリスティング(marketing X by goo)
株式会社クロスリスティングは、「marketing X by goo」というDSP広告サービスを提供しています。
Q&Aサイトの閲覧履歴や興味・関心から精度の高いターゲティングを実現でき、ユーザーのニーズや悩みに適した広告配信ができます。
また本ツールの運営には「エヌ・ティ・ティレゾナント株式会社」も関わっているため、携帯キャリアの契約情報(年齢や性別、課金状況)などからターゲティングできる点も特徴的です。
株式会社ソネット・メディア・ネットワーク(Logicad)
株式会社ソネット・メディア・ネットワークは、「Logicad」というDSP広告サービスを提供しています。
Logicadはソニーグループが開発した国産のDSPで、安心できるサポート体制が整っているかつ、高いターゲティング精度を誇るのが特徴です。
またDSP広告には珍しく、導入コストが一切かからないので、初期費用を押さえてDSP広告を始めたい方におすすめです。
DSPを導入する際のチェック項目
DSPを導入する際のチェック項目をまとめました。
- 導入する目的は何か
- ターゲットは明確になっているか
それぞれ詳しく解説します。
導入する目的は何か
広告の業界ではトレンドだからと言って、闇雲にDSPを導入しても期待できるほどの効果は得られません。
DSPの効果を最大限活かすためにも、「なぜDSPを導入するのか」「DSPを導入してどうなりたいのか」などの目的を明確にしましょう。目的が明確であるならば、DSPを導入した後のイメージが湧いてくるはずです。
たとえば、「広告配信の工数が削減してクリエイティブの作成にリソースを回せるようになった」などです。そのような導入後のイメージが、マーケティング活動の成功につながります。
まずは導入を決める前に、目的を明確にしましょう。
ターゲットは明確になっているか
DSPの最大の魅力は、ユーザー一人ひとりに合わせた広告配信ができる点にあります。
そのため自社が狙うターゲットが明確に定まっていないと、DSPの魅力を十分に活かしきれず、マーケティング活動で期待できるほどの成果を生み出せません。狙うターゲットが現状いないのであれば、検索キーワードに連動したリスティング広告を配信する方が、大きな効果を期待できるでしょう。
導入後の目的を実現するためにも、DSPを導入する際は必ずターゲットを明確にしておきましょう。この段階が明確になっているかによって、DSPの導入が成功するかどうか決まると言っても過言ではありません。
それぐらいDSPの導入において、ターゲット情報の明確化は重要です。
まとめ
本記事では、DSPの基礎知識やメリット/デメリット、提供している主要会社を解説しました。
ユーザーのニーズが多様化している現代において、One To Oneマーケティングを実現できるDSP「Demand-Side Platform(デマンドサイドプラットフォーム)」は、これからのマーケティング活動で欠かせないツールです。
広告配信の効果を高めるだけではなく、運用者の工数削減にもつながります。そのリソースをクリエイティブ作成や戦略設計に回せるようになるので、さらに質の高い広告を配信できるようになります。
しかし闇雲に導入を決めても大きな効果は期待できないので、本記事で解説した「目的の明確化」と「ターゲット設定」を参考に導入を進めてみましょう。そちらをしっかり理解したうえで、自社に適切なDSP広告を提供している会社を選ぶことが大切です。
DSPを導入して、マーケティング活動でより大きな効果を生み出しましょう。
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