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サブスクリプションモデルに適したアプリとは?

サブスクリプションモデルに適したアプリとは?

アプリのマーケターが、アプリで収益を得るための方法として、昨今「サブスクリプションモデル」が注目されています。しかしながら、広告モデルやアプリ内課金モデルといった方法に比べてそのノウハウはまだまだ知られていません。今回のコラムでは、このサブスクリプションモデルについてAppLovin日本法人代表の林宜多が取りあげます。

はじめに

アプリマーケターの間で最も認知度が高い収益方法は、広告モデルとアプリ内課金モデルですが、その陰に隠れて見過ごされているのが「サブスクリプション」モデルではないでしょうか。サブスクリプション型のアプリでは、ユーザーは定額を支払うことで3カ月、半年、1年などの一定期間のアプリを利用することができます。サブスクリプションモデルはアプリマーケターにとって、ユーザーから得られる収益を予測可能にし、広告モデルやアプリ内課金モデルに比べて高いARPU(Average Revenue Per User: 1ユーザー当たりの平均収益)を確保することができます。さらに、ユーザーとの深いエンゲージメントを実現することができる魅力的な収益方法です。

App Store は、2016年にサブスクリプション型アプリの売り上げを前年比74%増の27億ドルまで伸ばしました。この背景には、Appleがサブスクリプション型のアプリの売上高から徴収していた30%の手数料を、課金が1年経過したユーザーの場合にはその半分の15%まで引き下げたことが一因としてあげられます。さらに、それまで Apple は Spotify や Netflix などの特定のアプリでしかサブスクリプションによる収益化を認めてなかったのですが、昨年からどのカテゴリのアプリでもサブスクリプションモデルを取り入れることができるように変更しました。 その結果、サブスクリプションモデルが様々なカテゴリのアプリで拡大したのです。

増え続けるサブスクリプション型のアプリ

米国のサブスクリプションモデルのアプリは、メディアとエンタメのカテゴリで2017年4-6月期に売上高第1位だった「Netflix」が筆頭に、マッチングアプリ「Match」「eHarmony」、健康管理アプリ「Endomondo」「FitStar」「Map My Fitness」、およびビジネス系アプリ「Evernote」「Trello」「Slack」など様々な分野でサブスクリプションを採用し、成功しています。そして日本でもエンタメアプリ「niconico」、マッチングアプリ「Pairs」、レシピ検索アプリ「クックパッド」、グルメ口コミサービスアプリ「食べログ」、女性の健康管理アプリ「ルナルナ」などの人気アプリでサブスクリプションモデルを採用し、今後も更なる拡大が見込まれます。

なぜサブスクリプションモデルのアプリは成功しているのでしょうか?次からはサブスクリプションモデルが成功した背景を紐解きながら、サブスクリプションモデルが適しているアプリの特徴をお伝えします。

サブスクリプションモデルはSaaSとよく似ている

アプリの広告モデルは、従来のテレビCMの形を受け継いでいます。テレビの視聴者は番組を無料で手軽に見ることができる対価として合間に流れる広告を受け入れます。アプリの収益化もこれと同じでマスマーケットに向けたアプリを作り、アプリパブリッシャーや広告主によってカスタマイズされた広告をユーザーのアプリ体験の邪魔にならない程度に組み込んで収益化を図っています。

一方、アプリ内課金モデルは、店舗販売に似ています。店舗販売では、顧客は店舗内を自由に見て、気に入ったものがあれば商品を購入します。アプリもお店と同じように、ユーザーは基本的に無料で使えて、気に入ったアイテムや機能を選択して課金して利用するシステムです。この方法はユーザーが重要視する「選択肢」を提供できますが、時期やラインアップによってユーザーがアイテムを買ったり買わなかったりするので、アプリから得られる収益が安定しない問題点もあります。

そしてアプリのサブスクリプションモデルは、SaaS(Software as a Service: ソフトウェアに必要な機能を必要な分だけダウンロードして利用できるサービス)に通じるものがあります。サブスクリプション型のアプリでは、たとえば最初の1~2カ月は無料のお試し期間があったとしても、その後もサービスを使い続けるには料金を払わなくてはいけません。ユーザーから得られる収益を予測可能にするため、特にサブスクリプションモデルやSaaSは、ビジネスプランのリスク管理を担う最高財務責任者(CFO)やベンチャーキャピタリスト、株主といった立場にいる人々に好まれるようです。

ユーザーにサブスクリプションの会員になってもらう方法として、長期契約に割引を適用する戦略がよく使われます。この方法はSaaSでも取り入れられています。たとえば、「月ごとに契約更新するのではなく1年契約をした場合、利用料の25%を割引く」などの割引方法があります。長期契約を獲得できれば、そこから得られる収益を予測しやすくなり、ユーザーのLTV(Lifetime Value: 顧客生涯価値)向上にもつながります。更にサブスクリプションでは、ユーザーが重要視する「選択肢」も提供することが可能です。

このようにサブスクリプションモデルは、広告モデルやアプリ内課金モデルと違って、1度だけまたは定期的にユーザーのプランへの加入継続を促すだけで、予測された収益を得ることができるため、効率的にマネタイズできるとも言える手法なのです。

サブスクリプションモデルの利点

サブスクリプションモデルは長期的な収益を生み、LTV の向上につながるほかにも、ユーザーのエンゲージメントも深めることにもつながります。

たとえばサブスクリプションモデルを採用するマッチングアプリの「Tinder」では、「Tinder Gold」というサブスクリプション型の有料メンバーオプションを加えたことにより、効果的にユーザーから収益を得て、App Storeで売上高第1位を記録することができました。Tinder Goldの成功の裏側には、ユーザーは一度何かにお金を払えば、それに見合った価値を得続けたいという消費者心理が隠されています。サブスクリプションプランに加入したユーザーは、継続的にアプリを使う確率が高まります。それに伴いリテンション率 (既存顧客との関係を維持できる確率) は上昇し、全体的なユーザー獲得と維持にかかるコストの削減に結びつきました。

また、サブスクリプションモデルの導入はARPUの向上も期待できます。米国のマーケティングメディア「Localytics」によれば、ユーザーが一定期間に費やす金額を単純計算した場合、サブスクリプションモデルを採用しているアプリのARPUは、広告モデルの2~3倍、アプリ内課金モデルの1.5倍程度であるといわれています。

自作音楽アプリSmuleのユニークなサブスクリプションの例

サブスクリプションモデルのアプリの中でもユニークな例として、カラオケをモバイルで楽しむことができるアプリ「Smule」があげられます。MAU(Monthly Active Users:月間アクティブユーザー)は5,000万人を誇ります。Smuleにはユーザーが音楽を自作・自演・シェアする機能を持っており、アプリ上では毎日2,000万曲以上のユーザーの楽曲が生まれます。

Smuleの収益化は、「フリーミアム」モデルを採用しています。ユーザーに無料版のアプリを提供しつつ、月額または年額のプランで広告のないバージョンへのアップグレードを提案しています。年額プランで契約した場合は、50%の割引が適用されます。

Smule がユニークなのは、ユーザーが作り出したコンテンツで価値を生み出し、ユーザーのエンゲージメントを深めて、サブスクリプションモデルを成功させているのです。これはNetflix や Hulu のように企業側からユーザーに向けてコンテンツを提供する従来型のメディアストリーミングや 、Trello や Slack のような実用型B2Bが提供する価値とは異なるものです。

さらにSmuleは、ゲームと音楽のハイブリッドという点でも珍しい取り組みをしています。ゲーム業界では、Xbox Live や Sony の PlayStation Plus などオンラインでゲーム機にゲームを提供するアプリではサブスクリプションモデルの導入は一般的ですが、モバイルゲームではまだ普及していません。こうした中、Smule はモバイルでサブスクリプションモデルを採用する数少ないデベロッパーの1つでもあるのです。

ゲームアプリカテゴリーで生まれる新たなチャンス

サブスクリプションモデルは成功しているゲームアプリでも取り入れられています。例えばRPGやシュミレーションゲームの中には、「World of Tanks Blitz」や「Teenage Mutant Ninja Turtles: Legends」のように、ゲーム好きのユーザーに対して“ゲームし放題”プランを提供し、大いに受け入れられています。

また先ほど少し触れたXbox Liveや PlayStation Plus では、無料でゲームを提供して、そのゲームのマルチプレイヤーオプションなどのアップグレードを月額や四半期ベースのサブスクリプションで提供するアプリも続々と増えています。更に、iOS11が発表されたころから、App Store や Google Play でサブスクリプション型のアプリが目立ってきており、今後、複数のゲームを一定の料金・期間内で「一括」ダウンロードできるプランが台頭するのは、そう先ではないかもしれません。このようにサブスクリプションモデルの導入が進みつつあるゲームアプリでは、新たなビジネスチャンスが生まれることでしょう。

特に、サブスクリプションモデルは複数のタイトルを保有し、クロスプロモーションを測ろうとしているデベロッパーにとっては魅力的な戦略となります。その一方で、異なるゲーム制作会社のゲームをまとめてサブスクリプションモデルで収益化につなげようとするのは、ビジネスモデルが複雑になってしまうので注意が必要です。

サブスクリプションモデルに適しているアプリの特徴

ここまでは、自作音楽コンテンツやゲームなど様々なカテゴリでサブスクリプションモデルを取り入れたアプリの成功例を紹介しました。なぜこれらのアプリは成功したのでしょうか?ここからは、サブスクリプションモデルに適しているアプリの特長を4点お伝えしたいと思います。

1.ユーザーが継続的に利用して、コンテンツのコア機能のアップデートが定期的に発生するアプリ(例:Dropboxでのストレージの拡大、Adobeでのサービスの追加など)

2.アプリデベロッパーにとってアップデートやサポートにかかるコストが高く、ターゲットユーザーに1回の課金でいくらまで受け入れられるか判断しにくいアプリ

3.他のアプリでは視聴できない絵本やスポーツ番組など、専門コンテンツを提供するアプリ

4.マンガ配信アプリのように膨大なコンテンツをかかえ、毎週・毎日など一定期間ごとに“新鮮さ”がウリの最新のコンテンツが更新されるアプリ(補足: 最新のコンテンツを更新しないアプリではサブスクリプションモデルが向いているケースは多くありません。しかし、例外もあり、再放送のないオリンピック動画などのライブラリを提供するアプリなどは、サブスクリプションモデルが向いているケースもあります。)

また上記4点の特徴に加えて、サブスクリプションモデルはアプリ内課金モデルなどほかの収益モデルと組み合わせて使うこともできます。たとえば、サブスクリプション型の会計アプリの場合、小規模企業向けに税申告シーズンには決算機能をアプリ内課金で提供することも有効です。

最後に

アプリの数が増え続け、大手アプリデベロッパーと独立系のデベロッパーのマーケティングの力の差がますます開く中、デベロッパーやマーケターは今後ますます異なる収益モデルを探る必要があります。
そのような中で上記4点の特徴に当てはまるアプリは、サブスクリプションモデルによって収益の安定化を図り、ユーザー体験を向上していくことが可能でしょう。